視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
NPO法人たかさきコミュニティシネマ代表理事 茂木 正男さん(吉井町下長根)

【略歴】高崎工高卒。高崎映画祭事務局長を経て同事務局代表。全国コミュニティシネマ支援センター副委員長。04年6月から現職。NTTビジネスアソシエ群馬社員。

2人の監督から学ぶ


◎送り手側の役割大きい

 高崎映画祭も終盤を迎えた先月上旬、「シネマテークたかさき」に大林宣彦監督が来館された。宮部みゆきのベストセラー小説を映画化した『理由』の初日舞台あいさつが目的だったが、ここで興味深いお話を伺うことができた。

 大林監督は尾道市や臼杵市などで映画を撮り続けているが、この日は街中の映画館の存在価値について話してくれた。監督は、今話題になっている街の在り方について、「街づくり」ではなく「街残し」「街生かし」がいかに大切かを分かりやすく話された。

 つまり、街づくりには古いものを取り壊し、新しいものを造るといったイメージが強い。それよりも、今ある街を残し、生かしていくことに力を注ぐべきだ―とおっしゃる。そして、古くなり使用されなくなった銀行を改装して創(つく)った私どもの映画館「シネマテークたかさき」を褒めていただいた。

 お話を聞いて、県内の主要都市で推し進められている郊外型都市づくりについて、あらためて考えてみた。

 混み合った市街地に手をつけるよりも、郊外に住宅地や店舗を整備して道路を拡張していく方法が現在進められているが、こうした方法は経済が右肩上がりのときには有効で、安い土地や広い駐車場が得られることから街中の狭い店舗をたたみ、郊外に進出したお店も数多くあった。しかし、経済の勢いが鈍化し、高齢化が一気に進む今となっては、寂れた中心市街地と拡大する郊外型都市部を抱える地方都市は、大きな経済的リスクを受けていくのではないだろうか。

 今、県内の中央地区では、大型のショッピングセンター(SC)の建設計画が相次いで進められている。そして、こうしたSCにもシネマコンプレックス(通称・シネコン=複合映画館)の進出が予定されている。ここを中心とした街づくりも同様に行われていくことだろう。こうした環境のなかで、求心力を失った中心市街地を再び魅力的な街にしていくために、日常的に供給できる“何か”を求めていくことが重要ではないか。

 私は「映画」がこの“何か”になりうる要素を備えていると思っている。それは(1)娯楽性がある(2)世界に広がっている(3)飽きのこない作品群(4)文化ジャンルとの連携が可能―などである。

 大林監督がいらした二週間後、今度は『パッチギ!』の舞台あいさつに井筒和幸監督が来館された。監督はテレビの深夜番組のレギュラーで、歯に衣着せぬ言葉で映画の批評を行うことから多くのファンに支持されている。一晩、お酒を飲みながらお話を聞いて感じたことは、映画の魅力を伝える手段は無数にあるのに、それを十分に活用していない送り手側の未熟さだった。送り手側の役割は大きい。

(上毛新聞 2005年5月9日掲載)