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上野村森林組合参事 黒沢 一敏さん(上野村楢原)

【略歴】万場高卒。シイタケ栽培など農業経営に取り組んだ後、高崎市内の生協職員となり店長に。01年から上野村森林組合に移り、総務課長を経て、現職。

中国で住宅販売


◎注視したい経済情勢

 林業経営は木材価格の暴落により破たん状態となっているが、九州の木材業者が好調な中国経済に目を向け、丸太を輸出していると聞き及んだ。よく調べてみると、丸太を輸出して中国の安い労働力で合板や内装材、集成材に加工。それを再び日本に輸出していることが分かった。中国国内には日本企業の資本投下で大きな合板工場やプレカット工場が造られ、そこで生産した製品の大半が日本に向けて輸出される。

 上野村森林組合は、その発想を転換させてみた。輸出した木材をそれらの工場で加工し、現地で販売したい。そう考え、中国を視察した。第一の目的は中国での日本住宅の建設である。具体的な場所を選定し、平屋建て二一・五坪の主要な構造材を二棟分プレカットしたものを現地に送り、内装材、床材等、現地調達できるものは活用して安い労働力で組み立てる。基本的には中国の一般市民層をターゲットにして、日本円で三百万円程度の低価格で販売することにした。

 北京の住宅事情は活気に満ちていた。北京周辺は高層マンションの建設ラッシュが続き、新築マンションの販売価格は日本円で一ルーム二千万円ほどだが、ほとんどが完売状態。郊外にはマンション生活に飽き足らない富豪が出現し、五千万円、一億円の豪邸が売れている。北京市内では一戸建て住宅は建てられない法律らしく、また土地の個人所有も認められず、あくまでも中国政府から七十年の期間限定で借り受けるらしい。

 当初、われわれが想定した二一・五坪の一戸建て平屋住宅は北京市内では建てられないことが分かった。富豪でしか郊外に家を持てない状況の中で、仮に二一・五坪の一戸建て平屋住宅を建設しても、北京市内での一般市民層への展開に大きくずれが生じてしまった。この計画に対し、北京の有力者、賛同者の協力、提案が得られる中で、北京郊外で考えるのであれば二一・五坪にとらわれず、レベルを上げて取り組めることになった。

 中国東北部の遼寧省にも協力者がいて視察したが、レンガ造り一戸建て住宅が日本円で八十万円で仕上がってしまうという事情があった。木造住宅がマイナス二〇度という厳寒の地で優位性があるかについても疑問を感じた。また、一般市民は貧困で、購買力がつくまでにはまだ数十年の歳月が必要かとも感じられた。以上のことから住宅建設に関しては、まずは可能性のある北京郊外、邦人の多い上海周辺、別荘地がある海南島に照準を定め、モデルハウスを建設する予定である。

 日本の対中貿易は二十二兆円となり、アメリカを抜いたとの報道があったが、中国の経済はバブル状態にある。大都市を中心に個人の所得が増大し、生活水準も上昇して購買力も旺盛になっている。もはや中国は、世界最大の消費国に変ぼうしようとしている。この目まぐるしい経済情勢を注視し、新しいビジネスチャンスを逃してはならないと思っている。

(上毛新聞 2005年5月19日掲載)