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日本釣振興会県支部長 秋本 國勝さん(高崎市上中居町)

【略歴】高崎商卒。全日本フライキャスティング大会チャンピオン。県内水面漁場管理委員、県「瀬と淵を取り戻す」検討委員。フィッシングショップ・アライ経営。

釣具店から子供消える


◎変わりすぎた川の環境

 「釣具店から子供が消えた」といえば、「誘拐」と思われるかもしれませんが、そうではなく、釣具店に子供が釣り具を買いに来なくなったということです。

 いつごろからといいますと、十年近く前から少なくなり、数年前ごろからは県内すべての釣具店にほとんど来なくなりました。関係ない人は「なんだそんなことか」と思われるかもしれませんが、私は将来において重視すべきことととらえています。

 広く考えたとき、自然の中で釣りを楽しみながら自然のメカニズムを知り、物言わぬ自然は私たちにどれほど多くのものを与えてくれているのか。自然が破壊されたとき、私たちは何を失わなければならないのか。だから、自然は皆で大切にし守らなければならない―など、自然の中の釣りは屋外の生きた勉強の場といえます。

 また、少し狭めて考えたとき、小中学生のころ、自然の中で夢中で川遊びや魚釣りをした経験のある人は、大人になっても、いつか釣りを始めます。けれども、子供のころそういった経験のない人が大人になって釣りを始めるのはまれです。釣具店に子供が顔を見せなくなってから、すでに十年近くが過ぎようとしています。杞憂(きゆう)かもしれませんが、このまま時が過ぎていったら、将来、釣り人は激減するでしょう。そのときには、釣具店の経営は成り立たないし、漁業組合の運営も厳しいものになるでしょう。

 情勢に敏感な本県の水産行政も、何年か前から予算を組み、子供たちの釣り教室や釣り大会を、県漁業組合連合会を通じて各地で年に一度か二度行ってきています。この行事は毎回大好評で、募集人員は早々と定員になってしまいます。ところで子供たちは、その行事の前日、釣具店にワイワイ見えるが、その翌日から一人も来ない。その日限りなのです。

 なぜ? どうして? 県の予算が少なすぎるのか? 教室や大会に工夫が足りないのか? どう考えても分からない。のどの奧に何か引っ掛かったような日々を送りながら、先月二十三日の朝、上毛新聞を見ながらハタとひらめきました。それは「ヤリタナゴ見つけた」の記事の写真です。この写真で自分が子供のころ、どんな遊びを毎日していたのか、走馬灯のごとく思い起こされてきました。

 私は、確か小学校三年生まで魚釣りはしていませんでした。勉強もせずに、自宅の前を流れる小川や田んぼの用水堀で毎日、フナやドジョウやシジミなどをとって遊んでいました。魚釣りを始めたのは四年生からです。

 よく釣りをしたのは、あぜ道を歩いて十分、川幅が十メートルほどの里見川です。いつも一緒だったのは同級生と上級生でした。そうです。釣りを始める土台として、近所の小川で魚捕りをしていたのです。しかし、現在ではそんな所は、ほとんどありません。小川は落ちたら上がれないコンクリート護岸に変わり、田んぼの用水路はU字溝で整備され、魚はおろか川虫さえ見えません。以前と変わりすぎた環境に、子供たちは永遠に戻ってこないかもしれません。

(上毛新聞 2005年6月9日掲載)