視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
県立がんセンター院長 澤田 俊夫さん(大泉町朝日)

【略歴】北海道出身。東京大医学部卒。同学部第一外科入局、同講師、県立循環器病センター副院長、県立がんセンター副院長を経て、04年4月から現職。医学博士。

がんと言われたら


◎2人目の医師の意見を

 県立がんセンターでは、ほぼ百パーセント「病名(がん)告知」が行われています。「告知」という言葉には「宣告」といった冷たい印象を伴いますが、実際はそういうことではありません。患者さんの自身の病気について、医師が所見をとり、必要な検査を行って、正確な病名とその病態を伝えるというごく当たり前の医療行為なのです。従って、「病気の説明と病名の伝達」とでも言った方がよいと思っています。

 最近、「インフォームドコンセント」という言葉がよく聞かれます。では「インフォームドコンセント」とは一体何なのでしょうか。日本語では「説明と同意」と訳されることが多いようですが、実感が伴いません。がんに限りませんが、もともと医療の主役は患者さん自身です。病気になるのも、病気を治すのも患者さん自身です。医療スタッフは患者さんが病気を上手に治すことができるように手助けをしているのです。

 三十年ほど前の日本では「パターナリズム」といって「医師によるお任せ医療」が横行していましたが、ようやく十年ほど前から「患者中心の医療」に変わってきました。

 患者さんが理解できるように、(1)病気の名前(病名)(2)病気の状態(病態)(3)病気に対する複数の治療法(そのメリット・デメリットを含めて)、そして最終的に(4)患者さん自身が治療法を選択できるように(必要に応じて(5)病気の予後についても)説明します。

 「インフォームドコンセント」はこれらすべての内容を含みます。従って、患者さんに対する「患者さん自身の医療情報の開示と患者さんによる選択」とでも言った方がよいのかもしれません。これらはもともと医療を受ける患者さんが持っている権利です。誰に遠慮することもありません。もし、ご自身が希望した「インフォームドコンセント」が行われていないと感じたならば、当然の権利として主張すべきです。

 ちなみに、県立がんセンターでは「インフォームドコンセントガイドライン」を作成し、平成十一年二月より実施しています。また、同センターでは「患者権利憲章」も定めていますので、外来の掲示やホームページで一度ご覧になってください。

 また、同センターでは今年四月から「セカンドオピニオン外来」を開始しました。あなたやあなたのご家族が、がんと言われたら、一つの医療機関や一人の医師の説明だけで納得できない場合もあります。そんなときは遠慮せずにセカンド、サードオピニオン(二人目、三人目の医師の意見)を求めてください。

 がんの治療法を選択する場合に、最も大切なことは自分自身が納得して治療にかかわることです。いつでも、どこの病院のどの医師でもセカンドオピニオンに応えてくれるはずです。どうしようかと迷っている場合にも「相談窓口」を開設していますので、気軽に相談してみてください。

(上毛新聞 2005年6月12日掲載)