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フリージャーナリスト 立木 寛子さん(東京都江東区)

【略歴】前橋市生まれ。新聞記者を経て84年からフリー。医療関連分野を中心に取材執筆。著書に「沈黙のかなたから」「ドキュメント看護婦不足」などがある。

介護と仕事復帰


◎将来をあきらめないで

 かつての仕事仲間が、障害のある子供のケアと仕事復帰のはざまで揺れている。

 雑誌や書籍の編集者をしている石川未紀さん(39)の二女、佳琳ちゃんが生まれたのは、二〇〇三年十一月。約七カ月の早産だった。妊娠中に臍帯(せいたい)ヘルニア(小腸や大腸などの臓器の一部がへその緒に入り込み、外に脱出している状態)が発見されたものの、出生の翌日に行った手術が成功し、危険な状態から脱することができた。

 やれやれと一息ついたのもつかの間。佳琳ちゃんは巨舌、右半身肥大や、肝臓、腎臓、脾臓(ひぞう)の肥大があることが分かり、ベックウィズ・ウィーデマン症候群と診断された。

 同症候群は、胎児の発育促進に重要な役割をもつ遺伝子の変異などが原因とされ、約一万三千人に一人の割合で発症するといわれている。遺伝に関係ない孤発性が多いが、家族性も15%程度あるという。男女比は一対一。巨大児に代表される過成長が特徴だが、成人に至るまでに多くは標準の体格となるため、病気に気が付かないケースもかなりあるとみられている。

 佳琳ちゃんの場合は、重症だった。未熟児網膜症を合併していたため、ほぼ失明。難聴も併発している。昨年五月には肝芽腫も発症していることが判明し、手術が必要となった。術前四回の抗がん剤治療の後に手術。術後も、二回にわたる抗がん剤治療に小さい佳琳ちゃんは耐えた。

 「たくさんの管につながれたわが子をみて、チューブを外してほしいと何度思ったことか」と石川さん。

 体調はその後安定したが、まだ寝返りが打てるだけの発達がないほか、鼻から十二指腸までの経管栄養と、気管切開による痰(たん)の吸引が頻繁に必要な佳琳ちゃんは、二十四時間のケアが欠かせない。

 今年四月には病院を退院し、在宅で石川さんが介護に当たっているが、会社で認められている介護休暇はもうすぐ切れる。

 「保育園の集団保育も可能」と主治医に言われているものの、病児保育の枠はきわめて少なく、いまのところ保育園に入れる見込みは立っていない。現在、個人のルート、保育サポート団体などに当たっているが、なかなか引き受け手は見つからない。

 しかし、それよりも石川さんを悩ませるのが「母親なんだから、仕事は辞めて自分で見るのが当たり前」といった声だという。

 「チューブにつながれている佳琳を、涙をのんでそのままにしたのは、どんな障害があろうが子供には子供の人生があると思ったから。それと同じように、私も私の人生を生きたい。社会の受け皿がなく、孤立している家族はうちばかりではありません。そうした多くの人の誰もが、自分の将来をあきらめないでほしい。現実は厳しいですが、そう思っています」

 私は、冷たい母親なんでしょうか―。こうつぶやく石川さんの胸中の霧は晴れない。

(上毛新聞 2005年6月16日掲載)