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群馬大学大学院工学研究科教授 大澤 研二さん(桐生市相生町)

【略歴】岡山大理学部卒。名古屋大大学院博士課程単位取得。理学博士。同大学院助教授、科学技術振興事業団などを経て一昨年4月から現職。愛知県出身。

地域で支える教育


◎年相応の興味を大切に

 大学は最先端の研究を行う所という印象を持っている人は多い。興味本位かもしれないが、一度中をのぞいてみたいとか、研究の話を聞いてみたいと思う人もいるだろう。これから大学を目指す子供たちにとっても、それは同じことで、どんなところか興味を抱いているのではないだろうか。

 自分が子供のころは、大学は閉ざされた空間に思え、近づきがたい雰囲気を醸し出していた。当時、市民講座があったかどうか分からないが、少なくとも子供向けの企画があったという記憶はない。それに比べると、現代は地域貢献が重要視され、地域に対する働きかけが強まっている。これは、のぞいてみたいと思う人や子供たちには都合のよい話だろう。

 少し形態は違うが、前任地でも中高校生向けの催しを開いたことがある。数学を主体とした組織だったせいもあり、数学に興味のある生徒が集まっていたが、精鋭部隊と呼ばれる割に響きが悪いように感じられた。用意された課題をそっちのけで勝手な方向に向かう子供たちを見て、取り組み方についての説明不足を反省する一方、ユニークさに対する考え方の違いが気になった。何かを基盤にした独自性より、何も根拠のない独自性を好む姿勢に少々へきえきとした記憶がある。

 確かに最先端のものを見せ、体験させることで科学に興味を持たせ、次代を背負って立つ才能を育てることができるのかもしれない。しかし、その一方で、それぞれに年相応の興味を満足させ、それを積み重ねることで才能の芽を出させることもできるのではないか。

 育った環境はその意味で大きな影響を及ぼすだろう。自分が育った名古屋という都市は、子供の教育という面でもさまざまな工夫を凝らしていたと思う。科学館という施設は科学にまつわるいろいろな展示があり、子供の興味をひくものだったし、併設されたプラネタリウムも解説員の独特の語り口とともに話題になっていた。だが、さらに強烈な印象を残しているのが日曜野外理科教室という催しで、夏休みの日曜日に植物、昆虫、化石、海の生き物などの採集に出かけ、そこでは野外教育協会に属する小中学校の教師が引率していた。

 申し込みの日には教育館の周囲の道路がいっぱいになるほどの親子が集まり、その人気はかなりのものだった。特に人気のあった昆虫採集はすぐに満員となって、早起きが苦手だった子供には化石や植物しか残っていなかった。しかし、残り物にも福があり、植物採集に引率した解説員はその昔、牧野富太郎に師事したという一流の人で、林の中で彼の話の面白さに引き込まれたのを覚えている。

 ほかにも実験室でプリズムや電磁石を組み立てる日曜科学教室も好評だったが、ある時期からとんとうわさを聞かなくなった。先日、教育委員会に確認したら、今もまだ続いており、ひと夏に千六百人近くの子供たちを集めるのだという。こんな形の地域の催しがいつまでも続いてくれるとありがたいと思う。

(上毛新聞 2005年7月1日掲載)