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月刊「マイ・リトル・タウン」編集発行人 遠藤 隆也さん(太田市新島町)

【略歴】18歳で上京、Uターン後の76年に「マイ・リトル・タウン」創刊。出版・印刷業やエッセイストとして活動。著書に「面白かんべェ上州弁」などがある。

館林・城沼の浄化


◎「ガショウキだいなァ」

 「あいつァ、ガショウキだかンなァ」とか、「そんなガショウキにすりゃァ、壊れちゃンべに」など、心の底に澱(おり)のように沈んでいた上州弁が、突如として口をついて出てくることがある。特に琴線に触れてくる出来事に遭遇したときなど、無意識のうちに口からほとばしり出てくるのだ。

 いつだったか、子持村で話をする機会を得たときに、この「ガショウキ」のことを聞くと、集まってた人全員が知らないと答えた。調べてみたら、前橋でも北西部の人は、知らない、と言う人が多い。

 これに相当する共通語には、大層、がむしゃら、力まかせ、馬力をかけること、強引…などが浮上してくる。

 上州弁としての同語の類語には「ムテッコ(ウ)ジ」(乱暴、粗暴、手荒なこと)や、「ノテ」(考えがあさはかで向こう見ずな人)があった。「あいつァ、ノテだから駄目だィ」などと、批判的物言いで使うケースが多い。語原は「能天気」だろうか。

 話の枕が長くなってしまうのはいつものことだが、自身の身過ぎ世過ぎの手段は“街の雑誌屋”である。ジャーナリズム業界の底辺で地にはいつくばりつつ糊口(ここう)を凌(しの)いでいるのが、実態であり、とてもじゃないが“提言”などクッチャベッテル状況にはない。

 従って、以下は必然的に限りなく情緒路線で、ということになる。

 六月号の特集は「利根川中流域紀行」だった。島村の渡船フェスタ、流れ込む河川の紹介、利根大堰(ぜき)の天然アユの遡上(そじょう)状況、群馬の水郷で行われている揚舟(あげぶね)ツアーなど、川とのかかわりを通したアングルからこの地域を眺めたらどうなるか、との気分がそ・こ・にはあった。

 取材を重ねる過程で「利根川の水を汲み上げ、導水管を敷設して城沼(館林市)の水を浄化する」旨の新聞記事が目についた。管轄は国土交通省。事業は本年度から始まる、という。

 早速、その付近から利根川の水を汲み上げるという、谷田川排水機場を訪ねてみた。計画では谷田川へ合流する鶴生田川沿いに導水管を敷設し、城沼まで水圧をかけて水を送るらしい。その長さ、約六キロ。

 何ともスケールのデッカイ話ではある。現場を訪れてみての感想は、「なんともガショウキだいなァ」との、ため息のようなツブヤキであった。

 余談だが、この「ガショウキ」は、古くは江戸時代の滑稽(こっけい)本『浮世風呂』に「がしょうぎ」として登場している。意味は上州弁の「ガショウキ」と同様である。普通、カ行子音は濁音になるのが上州弁の特徴なのに、ここでは「ぎ」が「キ」になっていて、何やらオトーカ(狐きつね)にバヤカサレた(化かされた)気分。

 まァ、狐なら笑い話で済むのだが…。

(上毛新聞 2005年7月4日掲載)