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NPO法人シーヤクラブ理事長 池田 久子さん(渋川市金井)

【略歴】3人の子供が不登校だったことから、「不登校を考える親の会」を経て、NPO法人シーヤクラブを設立。筝曲アンサンブル「真音(まいん)」主宰。

親同士の語らい


◎子育て考える足掛かり

 私が理事長を務めるNPO法人シーヤクラブでは、毎月第二金曜日の夜に「不登校を考える親の会」を開催しています。不登校はもちろん、子育ての悩みや家族の問題など、それぞれが悩みを抱えて集まります。子供が育った後は、親自身の生き方を考える場所にもなっています。すぐにすべてが解決するわけではありませんが、同じ思いを持った者同士、話すと心が軽くなるのが不思議です。

 親の会では、毎回いくつかのキーワードが出てきます。子供が不登校になると、まずは「世間体が悪い」ということになります。皆が学校に行っているのに、行かないわが子がとても嫌なのです。近所の人が立ち話をしていると、私の家のことを話しているのかしら、親の育て方が悪いと言われてはしないか、などと思ってしまいます。誰かに言われるのでもなく、自分で思ってしまうのです。

 そして、親の会で話をしていくうちに、世間は自分の中にあるのだということに気が付きます。世間は何もしてくれません。そんな世間を気にして、わが子との関係を悪くするよりも、家族で笑って暮らした方がよいのではないかと思います。

 不登校の子供のことをとても心配しているのに、どう接してよいか分からないときがあります。学校には行ってほしいけれど、無理やり連れて行くこともできないし、行かなくてもいいよとも言えず、つらい胸の内です。親子なのにお互いに孤独です。そんなときは正直に「腹を割って話す」ことが大切です。しかし、「腹を割る」ことは、親子といえどもなかなか難しいようです。

 不登校に限らず、子供のことをあれやこれや心配して、やきもきするのが親なのでしょうが、子供のことは子供自身に任せて「下駄(げた)を預ける」ことができれば、子供は自分で歩いていくことでしょう。「下駄を預ける」とは、無理を承知で物事の処置を相手に一任することです。頭で分かっても、これを実行するのはとても大変です。

 そして、一番大切なことは「信じて待つ」ことです。子供を心から信頼することができれば、子供も親を信じ愛してくれるでしょう。しかし、また、この「信じて待つ」ことがなかなかできないのです。

 親の会で話されるこれらのキーワードは、子育てを考える足掛かりです。苦しいときは、自分の価値観を少し変える必要があります。自分の育った環境や経験から出来上がった価値観を、すぐすぐ変えることは難しいことですが、親の会で語り合ううちに、だんだんと自分を客観的に見ることができるようになります。そして、多様な価値観に気付いていきます。そのコツは、人の話に耳を傾け、素直に自分を語ることだと思います。

(上毛新聞 2005年7月8日掲載)