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高崎市城東小学校栄養士 丸山 昌子さん(高崎市江木町)

【略歴】東京農業大短大栄養科卒。富岡市学校給食センターのほか、自校で献立作成や調理を行う高崎市の中尾中などに勤務。同市学校栄養士会献立作成班所属。

食中毒を防ぐ


◎五感を働かせて作業を

 梅雨時から夏にかけて食中毒が心配されるが、ここ数年はウイルス性の食中毒の発生で年間を通して注意が必要になっている。学校給食の衛生管理について、関係者以外にはあまり知られていないのが現状で、「えーこんなことまでしていたの」と言われることもある。

 例えば服装に関しては、作業区分ごとに白衣やエプロン、履き物まで取り換え、食品の二次汚染に注意している。そして、一番汚れを持っている「人間」、汚れを運ぶのも汚れをつけるのも人であるから、月二回の細菌検査、日常の健康チェックは欠かせない。本人はもちろん、家族の健康状態までもチェックをして調理室に入る。

 そして、一番大切な手洗いをする。つめブラシを使い、ひじまで丁寧に洗って消毒液で消毒する。それも一度ではなく、作業が変わるたびに洗う。それでも完全ではないので、使い捨ての手袋を使用し、食品に直接触れないように気を使っている。

 いよいよ調理、まずは食品の安全チェック。素材の消費期限、色やにおい、温度などいくつものチェック項目を経て初めて洗浄したり、切り始められる。調理の工程は前日に細かいタイムスケジュールを作る。また、耳慣れない言葉だろうが、作業導線図というものがあり、調理室の中を食品をどう動かしていったら衛生的か配置図に線を入れていく。タイムスケジュールと作業導線図を見ることで、翌日のシミュレーションと作業した後の反省ができる仕組みだ。

 温度管理の徹底も重要だ。すべての料理は七五度、一分以上の加熱を確認して仕上がりとする。サラダなどの野菜は塩素を薄めたもので消毒し、水でよくすすいでから、さらに加熱し冷却してドレッシングとあえている。以前より何倍も調理に手間がかかっている。

 高崎市では、栄養士が行っている研修の中に衛生管理の班がある。変化する食品衛生の情報をキャッチし、現場でどう対処していったらよいかを研究し、「衛生管理マニュアル」にまとめ、市内五十三校(園)で共通理解が図れるようにしている。また、市内の学校給食施設はドライ方式といって床に水をこぼさないように調理ができる恵まれた施設だ。

 しかし、作業する者が意識して作業しなければ床に水が垂れ、跳ね上がった水で食品が汚染されることがある。細心の注意が必要だ。ただ、細菌は目に見えないので、金属探知器ではないが、ここを通すとOKというようなものがあったらいいなと常々思う。それほど神経を使っていることがお分かりいただけると思うが、食中毒を防ぐには、調理をする者同士のチームワークと働く者が五感を働かせて作業を進めることが何より大切なことと考えている。

 これから先も新たな細菌が発見されれば、それに対して調理方法も見直しが必要になる。食中毒との戦いは繰り返され、終わりはない。今年も暑い夏がやってきそうだ。子供たちの命を預かる仕事でもあることを忘れずに、いい汗をかいて頑張ろうと思う。

(上毛新聞 2005年7月15日掲載)