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日伯学園校長 戸沢 江梨香さん(大泉町西小泉)

【略歴】ブラジル生まれ。同国の中・高校、山野美容専門校卒。美容免許を取得。三菱商事勤務後、大泉日伯センターを経て、現在、日伯学園校長を務める。

日系の子供たち


◎思春期こそ教育機会を

 今回は、どの国の親も直面する思春期の子供たちの様子についてお話しします。

 日系の子供たちは幼いころから両親の抱擁やキス(スキンシップ)を存分に受けながら育っています。また、ほとんどが恋愛もののブラジルのテレビドラマを、子供も家族と一緒に見ています。そのような環境ですので、性教育はとてもオープンで、異性の気持ちをつかむ方法も自然と身についていきます。さらに、ブラジルも当学園も同じですが、個性を大事に育てます。想像力を豊かにするための教材を使用し、「考え方は一つではないんだよ」「人はみな違っていていいんだよ」と教えます。

 おしゃれに対しても敏感で、ピアスやお化粧、マニキュアは学校も親も認めています。また、家庭では子供を一人の人間として扱うため、子供のころから自分の意見を求められます。このような家庭環境、教育環境の中で、子供たちは外見だけでなく、内面も成長していきます。大人びた外見や異性の扱いにたけている彼らに、日本人の子供たちが引かれるのは当然といえるでしょう。

 そんな一人前に見える日系の子供たちですが、就学となると、とても気がかりな状況にあります。日本の学校、ブラジル人学校のいずれの就学者においても、何らかの理由で不登校になる子供たちが生まれ、「居場所」がなく平日の昼間から町にたむろしている姿が見受けられます。不登校だけではなく、未就学、ドロップアウト(中退)と救いの手の届かないところにいる子供たちも数え切れないほど多くなっています。そして、そんな「居場所」を失った十五歳前後の子供たちの犯罪が増えているのが現状です。

 こうした子供たちの親は働くために日本に来ています。しかし、日本で生まれた、あるいは幼少期に来日した子供たちは「労働」が目的で日本にいるのではありません。日本人の子供と同じです。日本で教育を受ける権利があるのです。それなのに、どうしてこうも就学状況が違うのでしょう。

 共生に対する行政の積極的な取り組みは喜ばしいことですが、年齢で就学が制限されている今の日本の学校制度では、ドロップアウトはなくなりません。子供たち一人一人のレベルに合わせた学習が可能な制度への改正、幼児期からの日本語教育への支援策を望まずにはいられません。

 思春期の子供たちは心身の発達が目覚ましい時期です。それとともに、自分の秘めたる可能性に気付き、それを大きく伸ばす時期でもあります。人類の歴史を通じて蓄積されてきた知識を存分に吸収できるこの時期に、学校制度の壁によってその可能性が花開くチャンスを失ってしまうのは残念でなりません。日本の子供たちと同様、日系の子供たちの健やかな成長には、家庭教育と学校教育が両輪となって初めて可能になることを、いま一度皆さんと確認したいと思います。

(上毛新聞 2005年7月21日掲載)