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高崎経済大学非常勤講師 桂川 孝子さん(高崎市岩押町)

【略歴】高崎市出身。89年上智大文学研究科教育学専攻博士課程前期修了。松下政経塾卒塾。住友生命総合研究所主任研究員を経て02年退職。共著「地域介護力」など。

循環型社会と学生


◎大いに感じる機会を

 「近い将来、自分が直面すると思う環境問題は何か」と授業の中で学生に尋ねると、大きく分けて、大量の廃棄物の処分、地球温暖化、エネルギー・資源の枯渇、水資源の汚染と枯渇の四つに意見が集まる。中でも身近な問題として大量の廃棄物、つまりごみ問題への関心が高い。日本は二〇〇〇年から、資源やエネルギーの使用を最小限に抑え、廃棄物を再使用・再利用する「循環型社会」を目指している。

 「循環型社会」に対して学生が描くイメージを〇二年度の循環型社会白書で示されたイメージと比べると、「個人の環境意識が高まり、ライフスタイルも環境調和型にシフトしていく」との考えに賛同する学生が半数を超えている。「自分の生活を変えなくても、技術の進歩で循環型社会が達成される」に賛同するのは一割弱にすぎない。残りの二割強は「環境意識は高くはないが、脱物質化経済が進展するために循環型社会が可能となる」に賛同している。

 白書の読者の回答割合と比べると、人々のライフスタイルが変わると考える回答割合が学生側に若干多い。「まず自分自身が変わるべきだ」と考える学生が年々増えており、「社会や制度を作り、技術を利用するのは個人であるから、個人の意識が変わらない限り本当の循環型社会をつくることはできない」という趣旨の意見が多く寄せられる。

 一方で、社会が今どのように循環型社会へ進んでいるのか、自分が循環の輪にどうかかわっていくべきなのか、具体的なイメージは持ちにくいようだ。消費者として経済活動にかかわるものの、サービス提供者としてのかかわりがないため、循環型社会が持つ相互の関連性がつかみにくいといえる。

 授業の合間に行うグループ討論で、企業の事業活動から生じる環境負荷の実態や企業の環境対策を調べ、議論することによって、循環型社会の具体的な方向性と自分の生活とのかかわりを把握するようになる。日ごろ、かかわりの薄い地元の銀行やホテルが実施する環境対策を調べたり、街中で見かける宅配業者の環境報告書を読む中で、循環型社会への努力は業種にかかわらず進められるべきであることや消費者の知らないところで行われている企業努力に思いをはせる。

 自分が循環の輪の一部であることを認識すると、サービスを利用するときの心構えも変わる。小売店や飲食店などに行くと、環境配慮が気になるようになったという。卒業後は自らが企業や自治体でアイデアをし、実行する立場に立つ。学生たちには、大いに循環型社会について感じる機会を持ってほしい。

 アジアからの留学生からは、循環型社会に向かうべきであると思うが、「世界中で消費者が物を買わなくなったら自国の経済が発展しない」「わが国は貧しいので、国民は欲しいモノがまだたくさんある」との意見が出される。「貧困の克服=経済発展」「消費=幸福」という従来の考え方が支配的である。金銭や経済指標で測れない「幸福な状態」や「豊かな暮らし」について、再考する必要があることを切実に感じる。

(上毛新聞 2005年7月27日掲載)