視点 オピニオン21
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ERCエコリサーチセンター代表 江原 稔之さん(千代田町下中森)

【略歴】館林高校卒。半導体関連企業を退職後、環境保全支援ERCエコリサーチセンター創設。環境に優しい農場を経営するとともに、住環境を考えライフケア事業も展開中。

残そう心の中の自然


◎自然と共に暮らしたい

 先日、調べものがあり、本棚で文献を探していたら、懐かしい本が出てきました。それは、「よいこのがくしゅう7がつごうふろく、なつのずかん」です。昔の記憶がよみがえると同時に、懐かしさと思い出の本なのです。

 この本は、私の娘が小学生のころ、学校で購入したもので、ポケットサイズの図鑑になっていて親子でこの本を持って、近くの自然を探索したのです。

 本の項目でも「なつのむし」の所が、一番多くページが折ってありますから、いろいろな虫を見つけたのでしょう。でも、主に楽しんで探したのは私だったと思います。それから、自分が子供のころ、虫捕りをした林とか魚釣りをした川や池に娘を連れて行きました。

 特に思い出深いのは「ガタゴト橋」です。板組みのアーチ型をした橋が館林市と接する川に架かっていて、私は橋を渡るときにガタゴトと音がするのでその橋を「ガタゴト橋」と呼んでいました。

 よく真ん中に座って魚釣りをしたり、トンボやセミを捕ったり、川面を走るアメンボを眺めていたこともありました。とにかく橋の周りは自然がいっぱいでした。娘を連れて行ったときには立派なコンクリートの橋になっていましたけど、そのとき、そんな話を娘にした記憶があります。

 娘と一緒に自然探索をしてから十数年、今では大学を卒業し、今年から社会人になりました。

 十数年で、子供のころ遊んだ思い出の場所は自分の記憶の中だけになりましたが、楽しかった思い出は心に焼き付いています。

 今の子供たちが地域の自然を感じるのは、校庭とか、公園と名の付く所だけでしょう。自然と共存できる場所「共に必要と感じる場所」が少ないのではないでしょうか。そんな気がします。

 最近、ビオトープという言葉を耳にしますが、ビオトープとは、その地域に昔からいる動植物を呼び戻し、昔からあったような自然環境を残した場所を指しますが、生き物の楽園と子供たちのはしゃぐ声が響く所こそ、本当のビオトープだと思っています。

 形だけ整えても、「仏作って魂入れず」でしょう。多くの子供たちが地域ボランティアとして、親子でごみ拾いに参加していますが、心ない大人たちが捨てたごみを拾って子供たちは楽しいでしょうか?  自然は破壊されずに残るでしょうか? 疑問です。

 私はこう思うのです。「残したい自然・こんな自然があるといいな」などの思いをアンケートなどでまとめ、町全体の思い出づくりマップなどを作成して、幾つかの自然探索ルートを考えてはどうでしょうか。

 企業の環境保全やビオトープなども地域住民に開放して探索ルートに入れたりして、皆さんの心に焼き付く自然をつくり、一緒に知恵を出し合って次世代の子供たちに残しましょう。

 自然との共存こそ、環境保護につながるのだと思っています。

(上毛新聞 2005年8月10日掲載)