視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
コーチングハーベスト代表 小林 香さん(吉岡町小倉)

【略歴】渋川市生まれ。新潟大学教育学部卒。企業での人事・労務・研修担当を経て、コーチとして独立。日本コーチ協会群馬チャプター代表。

言葉は贈り物


◎相手の存在認め励ます

 私はコーチの仕事をしています。コーチとは相手と会話を交わすことで、その人の中にあるありたい姿を引き出し、その人らしく楽しく充実した日々を自ら手にしてもらうことをサポートするのが役割です。会話を通して相手をサポートしていくことが役割であるコーチにとって、言葉の使い方はとても大切で、その奥深さを感じる毎日です。

 私たちは親の立場、上司の立場あるいは友人の立場などで、相手にもっと力を発揮してもらいたい、もっと頑張ってもらいたいという思いを持つことがあります。そのために、相手に改め直すことを指摘してみたり、励ましてみたり、しかってみたりと、いろいろなコミュニケーションをとります。

 ただ、ここで立ち止まって考えてみたいことがあります。相手に良かれと思って伝えている言葉は、本当に相手が力を発揮できる手助けになっているのでしょうか。自分が伝えている言葉で、逆に相手に自信を失わせて意欲をなくさせてはいないでしょうか。

 人が生き生きと自分のやりたいことに向かって行動しているという状態を想像してみてください。生き生きと行動している人は、「自分って駄目だな」と思っている人でしょうか、「自分って良いな」と思っている人でしょうか。当然、後者です。「自分って良いな」と思えている人はますます輝き、その人本来の才能を発揮していきます。

 人が「自分って良いな」と思えるための手助けとして、コーチングには〈存在承認〉というコミュニケーションがあります。相手の「存在を認める」ということ。例えば「あなたがいると明るくなる」「あなたと一緒にいると、やる気になる」「あなたの顔を見ると、ほっとする」など。つまり、あなたがそこに存在しているだけで素晴らしい、ということを伝えるということです。

 もし、良い結果を出したから、良い成績だからという何かができたからという条件付きで相手を認めることだけをしていると、どういうことになるでしょうか。結果が出せないときは駄目な人間だということになってしまいます。駄目な人間だと思ってしまえば、ますます自分の才能を発揮することは難しくなっていきます。人は何かができた、できないにかかわらず、もともと素晴らしい存在なのです。

 自分が相手に投げかけている言葉は、どのようなものでしょうか。相手に「自分って良いな」と思ってもらえる手助けになっているでしょうか。

 私は自分の言葉の使い方を振り返るとき、越後の僧侶、良寛さんを思い出します。良寛さんは、自分の口から出てくる言葉を常に「贈り物」にしようと決めている方でした。自分の口から出てくる言葉を、相手を勇気づけるものにしたい、人を優しい気持ちにするものにしたいと実践されていました。私の言葉は贈り物になっているだろうかと、ときどき振り返ってみることができたら、周りの人の笑顔が増えていくのではないでしょうか。

(上毛新聞 2005年8月13日掲載)