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NPO法人シーヤクラブ理事長 池田 久子さん(渋川市金井)

【略歴】3人の子供が不登校だったことから、「不登校を考える親の会」を経て、NPO法人シーヤクラブを設立。筝曲アンサンブル「真音(まいん)」主宰。

NPO法人と行政


◎企画等に正当な評価を

 近ごろでは、NPO法人の話題が毎日のように新聞などで報道されています。NPO法人は採算的に独立した団体として、さまざまな活動を通して社会的な使命の実現を目指しています。行政や企業と異なり、公平性や利益性に関係なく柔軟な活動ができるため、自分たちの「高い志」と「価値観」で社会貢献活動ができる団体です。行政や企業ではできないような地域に密着した新たな公共サービスや、市民一人一人に合わせたきめ細かな活動ができます。

 私が理事長を務めるNPO法人シーヤクラブは、渋川市より「しぶかわファミリー・サポート・センター」の運営を委託されましたが、これからの行政とNPO法人の協働を推し進めていく、よりよい形を模索中です。私は、先ごろ開催された公民館主催の子育てセミナーにかかわらせていただきました。

 第一回は、児童相談員のT先生の指導で、絵を描いたり、小さいころの自分を思い出したりして、○○ちゃんのお母さんではなく、もとの自分に戻ってみることをやってみました。参加したお母さんたちの顔が、幼いころのように何だかかわいらしく見えました。「一番幸せと感じるのはどんな時か」の問いに「子供の寝顔を見る時」や「家族で過ごす時間」と異口同音に答えたのが印象的でした。そして、その表情は母の顔に戻っていました。

 第二回、三回は前橋友の会の皆さんの協力で、手作りのおもちゃとおやつの実習でした。学生時代に戻ったように、お母さんたちが生き生きと動いていました。四回目の最終日は、「私の子育て、親育ち」という私の体験談の後、T先生の経験や数字に裏づけされた話で締めくくりました。愛着関係を十歳までにつくっておくこと、そして、親の仕事は信じて見守ること、そうすると、たとえ思春期に何かあったとしても、必ず立ち直れるといった話に、お母さんたちは熱心に聞き入っていました。

 託児係はファミリー・サポート・センターに登録している会員さんが担当し、三カ月から二歳までのお子さんを親身になって見てくださいました。若いお母さんが一時子供と離れて、自分自身を見つめ直すことはとても大事だと思います。また、どんなに小さな子でも自分の意思があることと、お母さんが一番大好きなことをあらためて実感しました。

 このセミナーでは、市民の側に立ったきめ細かな対応ができるNPO法人の特徴がよく生かせたと思います。これからは、行政の持っている建物や資金などのハードの部分と、NPO法人の持ち味である企画や人材などのソフトの部分を出し合って、市民のためによりよい活動をしていくことが必要でしょう。今後の課題としては、NPO法人が得意とする企画等に対して、正当な評価をしていくことだと思います。

(上毛新聞 2005年9月2日掲載)