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県立女子大学教授 片桐 庸夫さん(新町)

【略歴】慶応大大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。専攻は国際関係論、外交史、政治学。著書『太平洋問題調査会の研究』で04年度吉田茂賞受賞。

衆院選の1票


◎日本の姿を大きく規定

 このたびの衆院選は、政権交代が視野に入った意義深い選挙である。

 選挙戦では、造反自民党議員の非公認や「刺客」投入という思い切った手法、自民党の分裂劇を逆手に取る形でマスメディアの関心を引きつけ、民主党の存在をかすませる戦略の採用など、小泉首相の演出が際立つ結果となった。

 選挙の争点も、自民党は郵政の民営化問題一本に絞り、改革政党のイメージで押し通す戦術をとった。それが功を奏し、解散直後の小泉内閣支持率は47%まで回復、自民党の支持率も選挙区、比例代表とも僅きんさ差とはいえ、民主党を上回ったとの調査結果がある。

 民主党は「日本をあきらめない」と後ろ向きとも受け取れるイメージ戦略を打ち出したこと、郵政民営化法案への対案を出せなかったこと、政権を担うことになった場合に単独政権か連立政権かという基本姿勢をめぐる岡田代表と小沢副代表の対立も足かせとなって、反転攻勢をかけられないでいる。

 そのせいか、通例では当初小泉首相に有利に展開した場合には、選挙戦中盤あたりに潮の目を迎え、民主党有利に風向きが変わる。ところが、今回の場合には、そうならないままに終盤戦に突入せざるを得なかった。

 それは何を意味するのであろうか。(1)政権担当四年目を迎えているにもかかわらず、小泉首相への期待が低くないこと(2)恐らく潮の目あたりから有権者の間に改革政党をアピールする小泉路線が静かに浸透しはじめたこと(3)政権担当能力をめぐっては民主党以上に自民党の評価の方が高いこと。以上のように理解すべきと思われる。

 ところで、今回とりわけ注目すべきことが二点ある。第一点は、必ず投票に行くと答えた有権者が74%という調査結果すらあるほどの選挙への関心の高まりである。それは、郵政民営化、社会保障、年金、景気回復問題などよりも、政権交代が現実味を持ったことによるといえないだろうか。

 五五年体制下の政権交代は、資本主義か社会主義かという体制選択の問題でもあった。それが有権者から政権交代の選択肢を奪い、自民党長期政権を可能にした。その分、有権者に無力感、政治不信、政治離れといった弊害を引き起こし、無党派層をも生み出した。今回は、政治への期待が復活したと考えられる。

 第二点は、どの政党に投票するか未定の有権者が35%程度もいることである。最終的には、その動向が選挙結果を左右することにもなりうるということである。

 投票日から一週間前の今月四日、自公で過半数を超す勢いとの観測が流された。しかし、選挙結果は投票箱のふたを開けるまで分からない。要は自民党、民主党のいずれが勝利しようとも、選挙結果が政権の交代、政界再編などの契機をなすばかりでなく、二十一世紀の日本の姿を大きく規定することは明らかである。

 私たちは、有権者として将来を担う世代のためにも各党の公約やマニフェストを吟味し、清き一票を投じようではありませんか。

(上毛新聞 2005年9月9日掲載)