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群馬大学教育学部助教授 西園 大実さん(桐生市東)

【略歴】東京都出身。東京理科大大学院修了。薬学博士。専門は家政学と環境。現在は国や県が設置する環境関連の複数の審議会で委員を務める。

温室効果ガス排出削減


◎特色生かして足固めを

 九月としての世界平均気温が、今年は過去最高を記録したという。地球温暖化は、いつごろから始まったのだろうか。過去の気温を検証してみると、一九〇〇年ごろから異常な上昇が起こっていることが分かる。一方で、もう一つの地球環境問題として有名なオゾン層破壊は、八〇年ごろに生じた。すなわち、地球温暖化の方がはるかに古い問題である。

 ところが、対策に目を転ずれば、両者の順序は逆になる。南極のオゾンホールが明らかになったのを契機に、八五年に「オゾン層保護のためのウィーン条約」が、八七年にその「モントリオール議定書」が結ばれた。一方で地球温暖化については、九二年に「気候変動枠組条約」が、九七年にその「京都議定書」が結ばれた。すなわち、対策についてはオゾン層破壊の方が、地球温暖化より約十年先輩なのである。

 ときにオゾン層破壊が地球温暖化を招いたとの誤解があるが、発生した順から考えてそれはない。しかし、対策の順番が逆なために、誤解が生じるのであろう。

 ところで、「議定書」とは、「条約」に基づく具体的な実行内容の約束書のことである。従って、オゾン層破壊については「モントリオール議定書」の実行具合が注目される。最大の原因であるCFCという種類のフロンの日本での生産は、約束どおり九五年末をもって全廃された。その他のオゾン破壊物質の削減もスケジュールに沿って実行されている。その議定書の中身が十分なものかどうかは、議論の余地はあるのだが、とにかく決めたことは履行されているのである。

 では、「京都議定書」はどうであろうか。こちらの方の日本の約束は、温室効果ガスの排出を、九〇年に対して二〇〇八―一二年(第一約束期間)には6%削減するというものである。まだ結果は出ていないのだが、現時点での状況は削減どころか、むしろ増加しており、達成が困難視されている。

 その中で、国では「京都議定書目標達成計画」を策定した。本県でも、新「地球温暖化防止対策推進計画」づくりや、今年四月から地球温暖化防止活動推進センター(前橋市城東町)がスタートするなど、新たな取り組みが始まった。これらが功を奏し、約束を履行できることはもちろん大事だ。

 しかし、この問題は目先の目標達成ばかりにとらわれているわけにはいかないのである。最も重要なのは、第一約束期間以後も温室効果ガスの排出削減が継続していける社会の仕組みづくりを、この時期に行うことである。バイオマスや小水力などのエネルギー利用、自動車だけに頼らない交通の整備、全国でもトップクラスのフロン対策などについて、群馬の特色を生かした温室効果ガス排出削減の足元固めをしっかりと行いたい。

(上毛新聞 2005年12月4日掲載)