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前橋カトリック教会主任司祭 岡 宏さん(前橋市大手町)

【略歴】韓国ソウル生まれ。福岡サン・スルピス大神学院卒。89年から現職。著書に「泥沼の中にある福音」「遮られた非常口―あるつっぱりたちの記録」などがある。

賞味期限


◎豊かさにおぼれ過ぎか

 「ホームレスに失礼だよ。このインスタントラーメン、賞味期限が切れてるぜ」。夕食の後、食べ物が欲しいと訪れたホームレスに何も残ってないので、出したラーメンにけちがついた。

 賞味期限は腐敗告知日ではない。しかし、神経質になる人も多い。あるホテルで賞味期限が切れたレトルト食品をもったいないからといただき、欲しい人に配った。たまたま、ある会合の後、お昼だったのでカレーの袋を開け、残っていたご飯で食べた。しかし、賞味期限が切れていることを心配する人がいた。

 食中毒が起こったらどうするのだろうか。不安の輪が広がっていく。

 戦後の食糧難を経験した世代は食べ物がなかったので、少々腐っているのではないかと思われても、煮たり焼いたりして食べた。賞味期限が切れたくらいで捨てるのはもったいないと思われる。

 ある福祉施設が、いただいて半分も使ってないせっけんや歯磨き粉を「使ってください」と言うので、教会がいただくことになった。

 今、豊かな時代になった。ホームレスにも余り物でもあげなさいと気軽に言えなくなった。文句を言われないように、賞味期限の切れてない物をホームレスに、賞味期限が切れた物は私たちが食べましょうと気遣わねばならない。そして、人間関係がギクシャクしている。こんな状態が続けば、天罰が下るのではないだろうか。

 この満ち足りた現代にあって、おごっていれば滅びる日が来ることを今、語らなければならないかもしれない。

 ある日のことである。

 「あれ、かつらです」「え!」

 隣市の公園で十日ほど野宿をしているという十九歳と二十四歳の青年が泊めてほしいとやって来た。「七十歳まで生きるとしても、あと五十年も野宿生活では大変だろう。宿を提供するから、職探しをしなさい」。翌朝、ハローワーク(職安)に職探しに行くという二十四歳の青年に「君、その茶髪のボサボサ頭じゃ面接で駄目になるよ。床屋さんへ行きなさい」と、床屋代をあげた。その頭の髪形が漫画のゲゲゲの鬼太郎スタイルのような感を受けた。

 ところが、それが今はやりのヨンサマ(「冬のソナタ」の主人公)かつらだった。値段も三万円強。

 私は、ホームレスはかつらなどかぶらないという偏見を持っていた。ホームレスだって、おしゃれする基本的人権を持っている。

 桂かつら男とは美男子のことである。豊かな時代、ホームレスだってプリペイド式携帯電話を必需品としている。自家用車宿泊のホームレスもいる。

 豊かさにおぼれ過ぎて、天罰回避の策を講じなければ大変な天罰を招かないだろうか。

(上毛新聞 2005年12月18日掲載)