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絹俳句会主宰 高橋 洋一さん(富岡市黒川)

【略歴】甘楽農業高(現富岡実業高)卒。国鉄勤務の傍ら俳句を始め、上村占魚、清水寥人の門下となる。句集発行のほか、村上鬼城賞、県文学賞などを受賞。

公民館の使用料


◎有料化は理解に苦しむ

 富岡市には生涯学習センターと十の地区公民館があり、今年の十一月から県立社会教育館が富岡市の社会教育館となった。市民は誰でも健康で文化的な生活をする目的で、これらの施設を利用することができる。

 ところが、現在は小学校、中学校にかかわる育成会や保護者会などの使用と、公民館などが主催する行事や教室に参加する場合を除き、すべての利用者は使用料を支払うことになっている。もろもろの趣味の会は当然のこと、市民の孫や子にあたる幼稚園児の保護者会や高校生の保護者会の会議などでも一律である。

 生涯学習センターに支払った最も古い領収書は、平成十四年十月とあるから、この制度が発足して満三年を経たことになる。ちなみに、私たちの俳句会は社会教育認定団体になっていて半額に割引されているが、毎月の句会に千百五十円ずつ支払っている。俳句会の関係で近隣の市町村に出向くことが多々あり、公民館等をよく利用させていただくが、他の市町村ではどこも無料である。その都度、富岡市の文化行政の貧困を思い知らされるのである。

 富岡市の市民憲章には「伝統を尊び文化の香り高いまちにしましょう」とうたわれ、平成十二年十二月には「まなびの里生涯学習都市とみおか」を宣言している。その中に「ひとりひとりがかがやき新たな自分に出会うとき心から生きがいを感じます」「未来に生きる子どもたちは自然の恵みと家郷文化の中でこころ豊かに育ちます」などと記されている。こんな立派な市民憲章と生涯学習都市の宣言がされているのに何故、生涯学習の殿堂である生涯学習センターや公民館の使用を有料にしたのか、理解に苦しむのである。

 聞くところによると、市当局と地域住民の座談会で、一部の人しか利用しない公民館等は受益者負担で有料にすべきである、という意見を取り入れたという。市とすれば市民の声を市政に反映したということであろうが、これは寂しい判断である。確かに公民館は一部の人だけの使用が現状かもしれない。だが、その一部の人を火種にして仲間を増やし、輪を広げる努力をするのが行政の仕事であり、公民館本来の目的のはずである。

 図書館の利用者も一部の人に限られているだろう。だがそれでも常に補充し、貴重な本を無料で貸し出しているのである。

 公民館等の使用料は一年間で八、九百万円といわれる。市の歳入全体からみれば高が知れた金額で、失うものの方が大きい。

 公民館の教室で育った人がいずれリーダーとなり、会を興し、仲間を増やす。そうした活動をする人々には無料で公民館を開放してほしい。有料となった近年は、公民館の利用者がめっきり減ったような気がする。公民館等の文化施設を絶対に廃虚にしてはならない。

 富岡市は来春、妙義町と合併する。この合併を機に、公民館等の使用は無料にし、市民憲章に恥じない文化行政を推進していただきたい。

(上毛新聞 2005年12月19日掲載)