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中央ユーラシアクラブ群馬事務局長 後藤 康子さん(前橋市西片貝町)

【略歴】共愛学園高卒。中央ユーラシアクラブ群馬事務局長。中央アジア・コーカサス研究所理事。日本ウズベキスタン協力委員会委員。インテリアゴトウ取締役会長。

富岡製糸場


◎一日も早く世界の宝に

 中央アジアの国々(イスラム文化圏)を学び始めて約十年―。中央アジアとは一九九一年に旧ソ連邦から独立し、大国のロシアと中国の間に存在するかつての遊牧騎馬民族圏のウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンの五カ国を指します。

 これらの国々を紹介するボランティアの一人として、広大なユーラシア大陸の真ん中を占める中央アジアにかかわるさまは、「ノミがリュックをしょって富士登山」という歌のようです。

 中央アジアといえば、シルクロードの交差点。草原やオアシスに暮らすさまざまな民族が、はるか昔から東西の文明とたくさんの国々を結びつけながらシルクロードの歴史の担い手となりました。中国、ロシア、中東諸国などに囲まれ、西部のカスピ海周辺は低地、東部から南部にかけてはアルタイ山脈、天山山脈、パミール高原が連なり、他は砂漠と草原地帯が広がります。草原地帯の遊牧民、砂漠にわき出る水が豊かなオアシス地帯の定住民が点在する地帯です。

 歴史的にはペルシャ帝国、モンゴル帝国、帝政ロシアなどの支配を受けてきました。石油、石炭、天然ガス、鉄、銅、亜鉛、鉛、タングステン、ウラン、金などの天然資源を産し、農業も一部では盛んです。

 これら五カ国は一九九一年、ソ連崩壊に伴い独立した若い国々です。人口は五カ国を合わせて約六千万人。主な宗教はイスラム教スンニ派、ロシア正教などです。

 中央アジアの伝説に「紀元前、アルタイ地方で暮らす人々が二手に分かれ、魚が好きな人々が日本に渡り、肉を求めた人々が中央アジアのキルギスへたどり着いた。だから両国の国民は兄弟だ」というのがあります。キルギスに限らず、中央アジアには日本人と顔立ちが似ている民族が多く、中央アジア各国における親日感は非常に高く、日本との関係強化に熱いまなざしが向けられています。

 日本文化において、国際色豊かな天平文化の開花に中央アジアとのきずなが顕著にみられます。奈良の正倉院の宝物にペルシャの影響が認められます。これは、日本がシルクロードの終着駅(終わりというのではなく、到着したものを蓄えておくという意味合い)であったことを物語っています。

 二十一世紀を迎え、シルクロードの言い尽くせない歴史を語る一つ「富岡製糸場」が世界遺産として産声を上げようとしています。「日本で最初の富岡製糸」。上毛かるたの読み札が、今ほど二百万県民の心をわかせることはなかったことでしょう。ぜひとも本県の、日本の、そして世界の宝になる日が一日も早く来ることを願っている一人です。

(上毛新聞 2005年12月22日掲載)