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平方学園創世中等教育学校長 桜井 直紀さん(前橋市青梨子町)

【略歴】東京教育大卒。高校教諭、県教委青少年課長、学校指導課長、沼田女子高校長、高崎高校長を経て前橋市教育長。05年から現職。県子育連学術委員。

教職員に望む


◎社会教育の機能活用を

 昨年の十月ごろの新聞で、中学校にテニス(硬式)部を設置することについて検討が始まるとの記事が載っていた。この問題は、以前からテニス関係者が部活動としての導入を求めていたものだが、中学校側からは生徒の減少に伴う他の部活動への影響、指導者や練習場の確保の問題を抱えており、なかなか進展しなかった。その記事を読んで、部活動の在り方を学校教育だけの考えでなく、社会教育の観点から見直してもよいのではと、あらためて思うものがあった。

 現在、水泳、体操、サッカー、中学生の硬式野球などのスポーツクラブが各地に設置され、それぞれの分野で底辺の拡大や選手の育成に大きな力を発揮している。加入する選手の数も相当数になっているものと思われるし、また、保護者も子供がこれらのクラブに参加することを望んでいる面もあり、子供の活動が広い意味での社会教育に移りつつあることを示している。また、小学生については、以前から少年野球やバレーボールなど、かなりの部分を社会教育が担っている。

 種目によってはクラブに所属することで、中学生などの大会に出場する上で制限を受けることもあるようだが、このような規制も徐々に緩和される方向にあると聞いている。

 体育に限らず、学校教育においても社会教育とのかかわりの中で児童生徒の成長が図られるものである。以前から「学社連携」の言葉のもと、学校教育と社会教育が一体となり、教育効果を高めようとの取り組みが行われていた。しかし、その内容の多くは学校が社会教育の施設を使用することであり、そこに所属する専門的知識を有する人材の活用にまでは至らないことが多かった。

 最近では、学校で行う教育活動の一部を社会教育が有する機能で置き換えようとの方向になり、いわゆる学社融合の考えが進みつつある。県などが有するこれらの施設では、専門分野を担当できる職員の配置が行われており、この方々の力により、学校教育と同等以上の教育効果を上げることが可能になってきている。

 また、同様なことは、芸能や伝統文化などをはじめとする多くの分野で、団体に所属する多くの方々も教育の機能を発揮してきており、このような力を学校で活用することも盛んになってきた。

 学校を取り巻く状況も、子供を取り巻く状況も大きく変わりつつある現在、児童生徒の一人一人の伸長を図る上で、学校教育は社会教育の機能を積極的に活用する方策を考え、この力によって教育の充実を図る時代である。

 そのためにも、教職員は社会教育に対する理解を深めることが大切であり、研修会などでは、この面での内容をもっと取り入れることが望まれる。このことは教職員の考え方や見方を広げることになる。そして、これらが学校や教職員が有する教育機能を社会に役立てることにまで結びつけたいものである。

(上毛新聞 2006年1月10日掲載)