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環境カウンセラー 片亀 光さん(玉村町上新田)

【略歴】筑波大卒。環境評価機構代表取締役。高崎経済大非常勤講師。環境カウンセラー全国連合会常務理事。エコアクション21審査人。省エネルギー普及指導員。

下水道と合併浄化槽


◎まずは水源県の責任を

 県水環境保全基本指針によれば、本県には年間約九十億立方メートルの雨が降り、蒸発散や地下浸透を除き、降雨量の52%が河川(大部分が利根川水系)に流出している。利根大おお堰ぜきで約三分の一が取水され、武蔵用水路や荒川を経由して東京湾へ。利根大堰下流で一部が江戸川に分かれて東京湾へ向かい、残りが太平洋に注いでいる。その間に生活用水や工業・農業用水として一都五県の暮らしと経済を支えており、本県は水源と水質の保全に重責を負っている。

 しかし、県内河川の水質環境基準達成率は72・5%(平成十六年度、BOD=生物化学的酸素要求量)と、全国平均(89・8%)に比べ低い水準にとどまっている。汚濁原因の半分は生活排水であるが、下水道や合併浄化槽などの整備状況を表す汚水処理人口普及率は同年度、全国平均79・4%に対し62・3%で全国三十六位である。

 県汚水処理計画によれば、二十二年度までにこれを76%まで向上させる計画だが、それでも全国平均には及ばない。期間中の総事業費三千七百七十億円の八割近くを下水道整備に充当しているが、費用対効果や整備のスピードを考えると、合併浄化槽に重点を移すべきではないか。その点で市町村設置型の合併浄化槽整備を選択した太田市の判断は賢明であり、多くの市町村が追随することを期待したい。

 浄化槽法改正により、十三年度から原則的に単独浄化槽の設置ができなくなり、既設のものについても合併浄化槽への転換努力が規定された。しかし、県内三十二万基の浄化槽のうち合併浄化槽はわずか二割である。多くの市町村では設置費の一部を補助する制度を設け、設置や転換を促しているので、ぜひ活用していただきたい。

 また、来月からは適切な維持管理を怠って措置命令に従わない浄化槽設置者は三十万円の過料に処せられることとなる。設置者の自覚を求めるとともに、行政による適切な指導啓発を期待したい。

 一方、せっかく下水道が整備されても接続しない世帯もあり、下水道事業収支悪化の一因となっている。指導に従わずに三年程度経過したら、接続しなくても下水道料金を課金するなどの措置を検討すべきである。また、接続により不要となる浄化槽は雨水タンクへの転用も可能なので、有効に活用したい。

 水に恵まれた本県は節水意識が薄い傾向がある。一人一日当たり給水量四百七十五リットルは全国平均三百八十三リットルを24%も上回っている(十一年度)。近年、利根川水系でも渇水傾向が見られるので、良質な水源を大切に使う意識を全県的に盛り上げていく必要がある。

 下水道であれ、浄化槽であれ、油を流したり、洗剤を必要以上に使ったりすることは水質悪化を招くことを肝に銘じ、水源県に生活する県民としての責任を果たしたい。その上で、水源地域の森林整備などに必要な費用について、下流都県との間で水源税の議論が進むことを願うものである。

(上毛新聞 2006年1月14日掲載)