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元小学校長 松沢 清さん(千代田町萱野)

【略歴】豊島師範学校(現・東京学芸大学)卒。館林第二小校長などを歴任。県教委指導主事、県特別学級設置校長協会長、館林教育相談専門委員などを務めた。

家庭教育の役割


◎確立させたい生活習慣

 家庭教育の重要性は、常に叫ばれていることであるが、昭和四十五年ごろから、どこの市町村でも家庭学級講座が開設され、家庭教育の充実、振興を図った。

 当時は家庭も豊かになり、進学率も高まり、偏差値教育が重視されるようになった。

 そのため、家庭ではお金でわが子の教育を人に託す傾向となり、家庭教育でなければできないこと、やらなければならないことが軽視された。

 五十年代後半には、日本の教育界には非行の嵐が吹き荒れて、中学校の卒業式に警察官の導入まで考えられるような状態になった。

 当時の中曽根首相は、日本の教育を深く憂い、臨時教育審議会を設立し、脳神経科学の第一人者で京都大学学長を務めた岡本道雄氏が会長になり、日本の教育について徹底的に検討した。

 家庭教育は価値観が多様化し、崩壊の状態ではないかと言われるような状況にあった。そして、「キレた子供」の原因は家庭教育に問題があり、家庭教育の役割を明確にする必要があるというのが、当時の大方の意見だった。

 家庭教育については、大学教授やエッセイストとして活躍する木村治美氏から、いろいろとお話を聞く機会を得た。

 木村氏は、私がお世話になった元群大教授、木村駿氏(心理学、故人)の奥さまで、以前から知り合いであった。木村氏のお話を聞き、私の体験から家庭教育の役割を次のように考えた。

 家庭は、夫婦、子供と血縁関係で結ばれた人たちがお互いに愛情、思いやりの心を持って生活するところで、親は乳幼児を自立した一人前の人間になるまで育てる責任がある。

 そのために親が果たす役割とは何か。基本的生活習慣は食事、睡眠、排せつ、清潔など生きるために必要な習慣の確立。社会的生活習慣は、あいさつや人に迷惑をかけないといったことから、責任、約束、思いやり、感謝、規則など、社会生活に適応できるような事柄を確立することである。

 これらの習慣を身につけることにより、自律心、自制心を培うことが重要である。

 次に、人間が生きていくためには食べなければならない。食べるためには働かなければならない。そして、いただいたお金を有効に使い、安定した生活を営む必要がある。

 そして重要なことは、家庭は家族がくつろぎ、ほっとできる所でなければならない。

 これらの習慣を身につけるには、親は子供の発達の正しい道筋を知り、子供の成長を援助することである。親と子が長い道のりを一緒に歩き、未来に夢と希望を持って明るく、楽しく子育てをしたいものである。

(上毛新聞 2006年1月15日掲載)