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弁理士・羽鳥国際特許商標事務所長 羽鳥 亘さん(前橋市北代田町)

【略歴】成蹊大法卒。東京三洋特許部を経て87年独立開所。県知的財産戦略会議委員、日本弁理士会小中高支援チームリーダー、県高等学校PTA連合会長も務める。

学生の就業体験


◎もっと機会を増やして

 私の事務所では、県経営者協会が厚生労働省、日本経団連から受託している「インターンシップ(学生の就業体験)」事業に協力し、毎年、大学生を受け入れています。

 昨年、群馬大学工学部三年のKさんを受け入れましたが、実習終了後の感想文に「社員として企業の一員となり、仕事をこなしていくためには、一般常識に加えて、仕事に対する責任・熱意・知識をもち、さらに人間関係も重要であることを実感した。今回の就業体験は、具体的な就職を考えるよいきっかけであり、今の自分と向き合う機会となり、これからの糧となる有意義な実習だった」と記されていました。

 また、平成十三年に受け入れた群馬高専専攻科一年のNさんの実習終了後の感想文には「発明者が自分の発明のこの部分が素晴らしいと熱弁する姿に感動し、見ている私まで幸せになった。希望に目を輝かせている人を見るのは本当に気持ちのよいものだ。私は『絶対、弁理士になる!』と心に誓った。最新の技術や、社会人に接することのできるインターンシップは自分の将来を考える糧になると思うので、多くの人に経験してほしい」と記されていました。

 このように、インターンシップを終了した学生からは、実社会を仕事という観点から直接体験することができる本制度は大好評のようですが、一方で学生を受け入れる企業サイドからすると、「受け入れた学生を担当する社員が自分の本来の仕事時間を割くことになり、負担が大きい」「受け入れ期間が二週間ほどと短く、中身の濃い実習ができない」などの問題点があり、必ずしもすべての企業がインターンシップ学生を受け入れていないのが現状のようです。

 しかしながら、昨年、全国高等学校PTA連合会が行った「高校生と保護者の進路に関する意識調査」結果を見ても、高校の進路指導に対する保護者の要望として「進路について考えさせる体験・行動の機会をもっと設けてほしい」という意見が多く寄せられており、現在、文部科学省などが取り組んでいる高校生のインターンシップ事業に代表される体験的な学習を、保護者としても社会に強く求めている現状があります。

 さらに、「学生の就職、会社の採用には相互理解が必要であり、インターンシップによって相互理解が深まり、結果的に就職、採用に結びつけば大変よい制度だと思う」「インターンシップを受け入れることは社会貢献になり、会社のPRにもなり、産学協同開発のよい契機にもなる」などの企業インターンシップ担当者の意見も多数あります。

 将来の日本社会を支える人材を企業社会全体で育てることは、企業の社会的責任として必要であり、この社会貢献の観点からも、県内企業が多くのインターンシップ学生を受け入れ、大学生だけでなく高校生の段階からより多くの学生に就業体験をしてもらう機会を増やしてもらいたいものです。

(上毛新聞 2006年1月16日掲載)