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NPO法人アジア交流協会理事長 石川 正安さん(前橋市荒口町)

【略歴】山口県出身。タイヤメーカー勤務を経て前橋市立工業短大で土木、建築を学ぶ。69年に市内で測量業を創業。03年にアジア交流協会を設立。元少年指導委員。

カンボジアの子供たち


◎人づくりを念頭に支援

 長女がオーストラリア留学中に出会ったタイ人と結婚することになり、セレモニー出席のため、一九九九年の春、バンコクを訪問した。夕刻の到着なのでホテルへ直行。翌朝、ホテルから見下ろしたタイ王国の首都バンコクは通勤ラッシュで道路は大渋滞、人と車であふれていた。ふと、左右に目を向けると川幅十メートル程度の汚れた水路を小船が往来し、大勢の通勤者が雑然と乗り降りしていた。近くにはスラム街と思われる掘っ立て小屋が目に留まった。

 その夜、町並みを散策していると、幼子を抱いた五―六歳の子供が紙コップを片手に歩道に座り込み、物ごいをする姿、乳飲み子を抱いた母子も同様に歩道橋の傍らに座り込み、物ごいをしている姿に接した。その光景が二、三年経過した後も脳裏から消えることはなかった。数年後、長女の主人と連絡を取り、タイ王国の経済の実態を尋ねてみた。首都バンコクはもとより国境付近の住民は貧困にあえぎ、小学校に通えない子供、身売りされる子供たちが大勢いることを知った。

 過去十数年以上にわたり、会社の利益の一部を県内の社会福祉事業等へ寄付してきたが、体を使わない自己満足的なボランティアだと気付き、日本とは比較にならないタイの実情を知ったことで、東南アジア地域でのボランティア活動を決意した。初めにタイ東部のウボンラターチャニー県のラオス国境沿いの小学校に教室を建設、浄水設備、教材、園児たちの遊具等を寄贈した。

 成田―バンコク―ウボン間の往復には三日間を要する。なぜ、現地まで出向くか。タイにも各種ボランティア団体が寄贈した井戸を数基散見したが、大半が使用されていない。その理由はお金を寄贈し掘削しただけで、現地を詳細に調査しなかったことに起因している。

 その地域の地下水は塩分を含むことを調査しなかったことで、せっかく寄贈した井戸の水は料理や飲料水として使用できず、塩分でポンプは朽ち果てていた。これが現地調査の必要性を痛感した理由である。現地へは数回足を運び、自らの目で確認しながら進めた。

 そうした中、今後のボランティア活動を進めるにあたり、個人の力の限界を痛感し、NPO法人「アジア交流協会」を立ち上げた。現在、正会員三十八人、賛助会員二百六十人弱の支援を受け、タイよりさらに貧困にあえぐカンボジアに軸足を移し、教育支援を主体にした活動を続けている。

 特にカンボジア王国のコンポントム州は虐殺者ポルポトの中枢地で、六十五万人の州民が貧困と教育不足にあえいでいる。国づくりは人づくりを念頭に支援を続けたいと思う。教育里親制度では全国各地から大勢の支援を受け、現在四十数人の里子たちが通学している。この子供たちがカンボジアの将来を担うリーダーに育つことを夢見ている。物的支援も必要だが、人的支援(教育支援)の重要性を痛感している。皆さま方のご意見、ご指導、ご支援をお願いしたい。

(上毛新聞 2006年1月21日掲載)