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県環境アドバイザー連絡協議会代表 鈴木 克彬さん(富士見村石井)

【略歴】成城大卒。元ナカヨエンジニアリング社長。県環境アドバイザー連絡協議会代表、ぐんま日独協会事務局長、前橋市フォークダンス協会副会長。

森林環境の危機


◎県産材活用で行動を

 森林の役割は、台風や大雨等自然災害からの保全、二酸化炭素吸収による地球温暖化防止、都市部への飲料水および工業用水の供給源など、その存在は、地球に住む私たちにとって、欠かせないものである。しかし、昨今、日本の森林は一日一日と荒廃への道を歩んでいる。今回はその現状、問題点について皆さんとともに考えてみたいと思う。

 皆さんは現在、日本国内で使用される木材が外国産材82%、日本産材18%という数値をご存じだろうか。

 そもそも森林は、「植えて」「育てて」「切って」「使って」「また植える」という循環システムの中で成り立っている。しかし、その「使って」の日本木材の国内需要が激減したため循環が崩れ、林業経営が壊滅状態になっている。木を切っても売り場がなく、その上需要の減少から、切る費用が売価を上回る現象が各地で発生している。さらに後継者も山を離れ、今後森林を守る人が消滅するのではないか、と心配されている。では、なぜこのような現象が起こってしまったのだろうか。

 昭和三十年代以降、大量生産・大量消費の波は、住宅建築にも押し寄せ、プレハブ建築の台頭があった。そして、プレハブ家屋の材料はほとんどが東南アジア系の輸入材だった。一方、消費者もコスト最優先、画一化を選択、また大工ら建築業者も合理性の追求から加工された材料を使うようになった。その結果、国産材を使う個性的な日本建築は消えていった。

 さらに日本の国土は、尾根あり谷ありの急傾斜地が多く、諸外国のように平たん地の森ではない。そのため、伐採地近辺での木材加工、搬出が難しく、その後の流通等の経費を含めると、どうしてもコスト高となってしまう。日本産材使用減の流れは、経済原則の中で進んでしまったのである。

 昨今、地球は異常気象のせいか、温暖化が進んでおり、いつアメリカを襲ったハリケーン規模の台風が日本を襲うかもしれない。この状況を放置しておくことは危険であり、私たちは対応策を考えねばならない。専門家の意見によると、今、日本の山を守る緊急課題は、間伐材の伐採(混み合っている余分な木を切る)だといわれている。

 従来から県は、森林組合など各機関とも協議し、住宅建築時の県産材使用への各種助成補助、森林理解のためのボランティア育成事業など多くの施策を行ってきた。また、各行政機関も、公園のベンチや柵、道路のガードレールなど公共施設にグリーン購入(環境に配慮した調達)として、積極的に木材を使用している。

 しかし、これからは、補助金の継続や行政機関の施策等に任せるだけでなく、県民一人一人が考え、自覚し、危機意識を持って行動することが必要となる。県民総意で、具体的な県産材活用の出口、需要の機会を多くつくるなど、群馬の森林を守っていくことが必要だと感じている。

(上毛新聞 2006年1月30日掲載)