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県社会福祉協議会会長 宮下 智満さん(子持村白井)

【略歴】早大卒。1962年群馬県庁入庁。医務課長、地方課長などを経て01年保健福祉部長。04年保健福祉食品担当理事。05年3月退職、同年7月から現職。

地域の介護・福祉基盤


◎知恵を出し合い行動を

 年をとっても、障害があっても、できれば家庭で、住み慣れた地域社会の中で最後まで生き続けたい。これは多くの人々の切実な願いである。

 わが国の高齢者や障害のある人に対する福祉施策も、「社会福祉基礎構造改革」のもと、介護保険制度や支援費制度の導入、障害者自立支援法の制定など、地域の中で自分らしく生きることを支援する施策への転換を矢継ぎ早に押し進めている。

 関係者の努力によって「自己決定・自己選択」の理念に基づく「利用者本位のサービス提供」は、大変順調に拡充してきている。しかしながら、高齢者や障害のある人たちが、家庭や地域の中で安心して暮らせる環境が十分に整ったかといえば、これはまだ極めて不十分であると認めざるを得ない。

 二人暮らしの高齢者夫婦が老々介護に疲れ果てて心中したり、高齢者への虐待など本当に悲惨な事件が後を絶たない。

 また県の調査によれば、特別養護老人ホームの入所待機者は約七千人(昨年五月現在)に上るという。定員五十人の施設が新たに百四十カ所も必要な計算になる。二十四時間百パーセント完璧な介護が期待できる特別養護老人ホームのような専門的施設は、もちろんこれからも必要ではあるが、福祉施策の在り方としても、財政的にもとても対応できる数量ではない。

 家庭や地域の中で最後まで生き続けることを望みながら、現実にはこれだけの施設への入所希望があるということは、地域の福祉サービスがまだ十分でないことを如実に物語っている。

 これからますます高齢者は増える。必然的に一人暮らし世帯、高齢者のみの世帯も増加する。もちろん認知症の人も大幅に増える。いま、正に住み慣れた地域で生活継続が可能な「介護・福祉基盤」の整備が本当に急がれていると思うのである。

 タイミングよく、この四月からの改正介護保険制度には、新たに「小規模・多機能拠点による地域密着型サービス」が導入される。そのために生活圏域を単位としてどのような基盤整備を行うか、市町村による計画づくりが進んでいる。ぜひ充実したサービスを期待したい。

 ここで大事なことは、地域に住む私たち一人一人が、エゴなどと遠慮しないで、自分ならどうしてほしいか真剣に考え、その実現に向けて行動を起こすことである。例えば二十四時間対応可能な訪問介護・看護、年中無休で長時間対応もできるデイサービス等々。それを地域の人たちを巻き込んで地域の要望としてまとめ、みんなでその実現を目指す。

 地域にはたくさんの人材がおり、誰かが行動を起こせば、みんなが協力してくれると思う。民間の力も活用しながらみんなで知恵を出し合い、住み慣れた地域で生活継続が可能な福祉基盤の整備を促進したいものである。

(上毛新聞 2006年2月1日掲載)