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多野東部森林組合常勤理事 新井 和子さん(藤岡市本郷)

【略歴】藤岡女子高卒。会計主任、参事を経て03年6月から現職。県および全国森林組合職員連盟会長、県の土地利用審査会、公害審査会、環境審議会各委員。

林業の担い手


◎若者を定着させたい

 森林所有者の高齢化や木材価格の低迷などにより、全国的に林業後継者不足が懸念されている。そうした中、多野東部森林組合では、平成五年に系統機関である県森林組合連合会に協力を依頼し、全国版の情報誌へ造林や間伐などの保育作業や立木を伐採して丸太を生産する作業班員の求人募集を掲載した。

 それ以前は、極力地元から雇用したいという意識が強く、森林組合の地域内での求人募集としていた。そのため範囲が狭く、なかなか就職希望者は見つからなかった。専ら従事している作業班員の紹介による雇用が主で、若返りも進まなかった。また、作業班員の雇用形態もあいまいで、社会保険制度においては行政支援による退職金制度と労災保険だけの加入で、内容は乏しいものであった。

 全国版の求人募集を皮切りに、ハローワークへ積極的に募集を依頼、平成九年から十五年までは毎年募集し、合計三十一人を採用した。その間、年金、健康保険、雇用保険、任意の傷害保険などに加入し、社会保障制度の充実を図った。

 十年から年々若返りが進み、十一年に七十歳であった作業班員の定年を六十三歳に引き下げることができた。また、彼らの意識改革や人材育成、就業環境の改善にも取り組んだ。組織の一員であるという意識に欠けていたため、毎朝、全員を作業班員研修施設へ集合させ、朝礼を行ってから各班ごとに現場へ向かうよう就業体制を改善し、一日に一回は全員が顔を合わせる機会を設けた。

 人材育成では、林業作業士など林業に必要な資格を積極的に取得させたり、技術力の高い森林組合へ派遣するなど林業技術の習得向上に努めた。また、仕事に対する誇りと自覚を養うため、地域の学校や行政などから依頼される森林・林業教室や間伐研修会等の講師については、積極的に彼らを派遣することにした。昨年は、総代会で承認をいただき、作業班員の念願であった完全週休二日制を導入した。こうして、若い林業の担い手たちが森林組合に定着するよう力を注いできた。

 幸いにも、これらの取り組みが認められ、平成十五年度には全国森林組合連合会主催の林業労働力育成確保優良事業体選定表彰に推薦され、「林野庁長官賞」を受賞することができた。

 この受賞に恥じぬよう引き続き取り組みを続けているが、森林組合をめぐる諸情勢は厳しい。公的機関等からの事業の減少や木材価格の低迷などにより、全国的に森林組合の経営内容は不安な状況が続いており、当組合も例外ではない。役職員一丸となって新規事業の確保や作業の効率化、コスト削減などに取り組み、森林・林業の活性化と山村地域の振興に寄与していきたい。

 最後に、地球温暖化を防止するための森林の役割や森林の持つ公益的機能への期待など環境面が先行し、産業としての林業は置き去りにされている。林業が産業として成り立ち、森林所有者により森林の手入れが行われてこそ森林の機能が発揮される。そのことを忘れないでほしいものである。

(上毛新聞 2006年2月7日掲載)