視点 オピニオン21
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前橋カトリック教会主任司祭 岡 宏さん(前橋市大手町)

【略歴】韓国ソウル生まれ。福岡サン・スルピス大神学院卒。89年から現職。著書に「泥沼の中にある福音」「遮られた非常口―あるつっぱりたちの記録」などがある。

青少年の育成


◎永続性考える世代を

 「ギャクエンです」「え?」「援助交際の逆です」。きょとんとして、一人の少年は淡々と説明した。

 幾年も前、ある女子高校の寄宿舎の生徒が母親と相談に来た。

 「うちの娘が哀れなおじさんを援助しているというのですが、どう言えばよいのでしょうか」「お母さん。今、お嬢さんからお聞きの通り、哀れなおじさんを援助することを援助交際と言うのです。これは立派な売春です」。赤くなった母親の方が気の毒になった。

 でも、援助交際の逆<哀れな男の子をかれんな女の子が援助する>逆援。私は完全に若い世代とのずれに驚いた。

 私のもとに住んでおり、少年院に逆送された十七歳の顔立ちのうるわしい少年は十七歳の女の子から買われていた。

 出会い系サイトに写真入りで、買い手に呼びかける。月何万円かの約束で契約をする。花恥ずかしい乙女でなく“大和化けし子”の時代、がくぜんとする。

 インターネットで検索すると、逆援の出会い系サイトが無数にある。出会いを求める男性は高校生を中心に十代、大学生など二十代前半が多い。「携帯代が払えなくて、ぼく、困っています。好きなようにお使いください」

 自由で豊かな時代、男女平等の精神で、親から与えられた体を惜しみなく使う。知らない間に熟年者を時代遅れに思わせるような機械文明の発達は、ママゴンと言われる母親も探知できない所で小学生たちが出会い系サイトを利用している。

 携帯電話の写真には法の手は届かない。生まれたままの姿を写真で送り、自分をPRしている子がまさか自分の子だとは思わないだろう。

 ネットビジネスで、あどけないと思われる少年少女が、親も探知できない形で、自分を「商品」として売り出している。

 文明国の最先端を行く日本の若者の現状は戦慄(せんりつ)の世界だ。

 安全を求め、命からがら、共産主義の圧政から逃げ出してきたベトナム難民が嘆きにやって来た。「困りました。うちの子は日本人になった」「お子さんが日本の国籍を取られたのですか」「いいえ。親の言うことを聞かなくなったのです」

 戦後、アメリカ指導の最優等生になった日本人は、いつの間にか、親の権威など紙くずのように考える教育をしている。インスタントな自分中心の見方ではなく、コンスタントに永続性を考える世代を育成していくようにしたい。

(上毛新聞 2006年2月8日掲載)