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弁理士・羽鳥国際特許商標事務所長 羽鳥 亘さん(前橋市北代田町)

【略歴】成蹊大法卒。東京三洋特許部を経て87年独立開所。県知的財産戦略会議委員、日本弁理士会小中高支援チームリーダー、県高等学校PTA連合会長も務める。

知的財産教育


◎「戦略」に指針盛り込め

 内閣に設置されている知的財産戦略本部が決定した知的財産推進計画2005に「幼少から大学の各段階における知的財産教育の推進」が大きく掲げられています。日本弁理士会では、この子供たちへの知的財産教育に協力するため「母校に戻ろう」とのスローガンのもと、弁理士を全国の教育現場に派遣し、学校教育の中で知的財産の基本的な考え方を直接指導する活動を行っており、私は、この活動を担当する小中高等学校支援チームのチームリーダーをしています。

 この弁理士が行う小学生向けの授業の一つに「ビー玉を使用した回転台工作を通じての発明授業」があります。この工作授業では、市販されているテレビ等の回転台を子供たちに見せた後、プラスチック製のお皿、ビー玉、工作用紙を使った工作を各自で行わせることにより、発明・工夫の考え方を体験により学ばせています。具体的には、お皿の上に載ったビー玉をベアリングのように使用、工夫して加工した工作用紙をうまくお皿から浮かせることができれば、加工した部分がクルクルと回転する回転台が完成します。

 この工作授業の特徴は「正解は一つではなく、多数ある」「失敗と思えても、そこから成功に導くことも可能な場合がある」「仮に、修復不可能な失敗をしても、それが駄目と分かることに価値がある」ということを教える点にあります。このように、「正解が多数ある」という授業形態は、最近の子供たちにとって斬新なようで、子供たちは時間を忘れ、生き生きと工作にのめり込む姿を見ることができます。

 現場の先生や保護者は一つの正解を追いがちですが、子供たちの発想は非常に柔軟で、複数の正解探しにすぐに順応します。受講後の子供たちのアンケートには「想像がつかない面白いアイデアがいっぱいで楽しかった」「僕も発明品を作りたいと思った」等の声が多数寄せられます。

 県では、昨年、知的財産を戦略的に活用できるたくましい中小企業を育成することにより「ものづくり立県ぐんま」を築くことを目標に「ぐんま知的財産戦略」を策定しました。現在、この戦略に基づき、県内中小企業者への知的財産支援策を着実に実行に移しており、その成果は上がりつつあります。この「ぐんま知的財産戦略」では、知的財産を戦略的に活用できる経営者・技術者の育成が重点施策として打ち出されており、この点では大いに評価できます。

 しかし、残念ながら小中高生に対する知的財産教育には何ら触れられていません。知的財産教育の底辺を広げることは重要であり、県においても産業経済および教育関係部門が緊密に連携し合い、県内小中高生に対する知的財産教育の指針を策定することにより、十年後、二十年後の日本のエジソンを群馬から輩出したいものです。

(上毛新聞 2006年2月20日掲載)