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日本画家 上野 瑞香さん(富岡市七日市)

【略歴】東京芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画第三研究室修了。05年3月より富岡市内にアトリエを持ち、現在は個展、グループ展を中心に活動。

色彩


◎イメージされる“性格”

 「ひな祭り」はご存じのとおり、おひなさまを飾ったりして、女の子の成長や健康を願うお節句です。私は幼いころ、ひな祭りには自分がお姫様になれるような特別な思いがあって、いつも心待ちにして、まだかまだかと母を急がしては、おひなさまを飾って喜んでおりました。

 思い出話はさておき、皆さんは「ひな祭り」と聞いて思い浮かぶ色は何でしょうか。突然、色はと聞かれても、初めはなかなか思い浮かばないかもしれません。しかし、あきらめず何とか色を選ぼうと思って、もう一度考えてみると、何かしら特定の色が思い浮かんでくるのではないでしょうか。

 赤、はたまた、ピンク…。それらは恐らく、おひなさまの衣装やひな壇に敷く緋毛氈(ひもうせん)、その時季に咲く桃の花、あるいは「桃の節句」という呼び名などからイメージされる色だと思います。と同時に、「ひな祭り」すなわち「女の子の節句」という連想から、女性的と感じる色として赤やピンクが思い描かれている、とも考えられます。

 今は、多種多様な色が豊富にそろう時代なので(時代の変化は、ランドセルの色一つをとってみても、よく分かります)、一概には言えないのかもしれませんが、子供に品物を選ぶとき、今でも女子には赤やピンク、男子には青や水色を与える習慣があるようです。事実、色彩学においては、赤やピンクに対しては女性的、青や水色には男性的なイメージを受けるとされています。

 このように、色にはそれぞれイメージがあり、それは言葉を使って表すことができます。例えば女性的な赤、男性的な青、派手な赤、地味なグレー、はっきりとした黄色、ぼんやりとした薄緑、優しいピンク、落ち着いた茶色、安定感のある黒、不安定な赤紫、穏やかな緑、温かいオレンジ、冷たい水色などです。

 これらは色を表すときに使う言葉なのですが、実は赤や青などの色の名前の代わりに、それを「人」にしてみると「女性的な人」「温かい人」とすべてに当てはまることに気づきます。つまり、色には性格のようなものがあり、人はそれをイメージとして受け止めます。ということは逆に、人の性格を色にして置き換えることもできるのです。

 ただし、これは一般論であり、その色に対するイメージは、生まれ育った時代と環境、文化によって、異なってくるものでもあります。

 あなたが誰かにプレゼントを選ぶとき、あなたはその相手に何色の品物を選んでいるでしょうか。そして、あなたがその色自体に抱いているイメージには、どんな言葉が当てはまりますか。もしかするとそれは、あなたが知らぬ間にその相手から受けている印象、あるいは、あなたがその相手に対して抱く理想の表れといえるのではないでしょうか。

 プレゼントをするとき、ふとそんなことを考えてみるのも、また、人生に色を添える豊かな時間なのかもしれません。

(上毛新聞 2006年3月3日掲載)