視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
館林第十小学校長 青木 雅夫さん(館林市松沼町)

【略歴】群馬大教育学部卒、兵庫教育大大学院修士課程修了。県自然環境調査研究会会員。県小学校教育研究会理科部会長、館林市小学校理科部会長。

小型の帰化植物


◎植生で見逃せない一群

 畑や道端の雑草として普通によく見られるコニシキソウという、トウダイグサ科ニシキソウ属の地味な小さい植物がある。茎が分枝を繰り返し、地面に張り付いているように広がっている。赤い茎を切ると、白い乳液を出す。これは牧野富太郎が一八九五年に東京湾で見いだし、北米から渡来したとあるので、比較的古い帰化植物である。この仲間も在来種はニシキソウ一種であるが、その仲間の外来植物がどんどん侵入し始めている。

 北米および中央アメリカ原産のオオニシキソウは茎が立ち上がり大柄なので分かりやすいが、近年、ニシキソウに似たアレチニシキソウが館林市内の新しく造成された駐車場脇の空き地から急速に市内全体へと広がり始めている。二〇〇二年八月に初めて見いだしたが、〇五年八月には市内西部の幹線道路沿いでは、どこでも普通に見られるようになったのである。

 小型の帰化植物は、目立った大きな影響がない上に人々の関心も薄く、見逃されがちである。しかし、自然界のバランスの上に成り立っている植生を考えるとき、一つ一つが見逃せない一群であろうと思う。当然、大型の帰化植物の侵入と関係がないわけではないであろう。

 ぜんそくの原因であるアレルゲンが何であるか調べる検査で、皮膚テスト(プリックテスト)を受けたことがある。アレルゲンと疑われる物質の抽出液の薄いものを針で刺し、柔らかい腕の皮膚につけて様子を見るのである。

 その抽出液の中にカモガヤというイネ科カモガヤ属の帰化植物があり、皮膚テストに強烈に反応した。カモガヤはヨーロッパから西アジアの原産で、明治初期に牧草として移入され、全国各地に広がったという。地震で崩落した山肌に、緑化のためにヘリコプターで種子を散布したこともあったそうだ。その植物の茎(イネ科植物は茎のことを稈(かん)という)の高さは五十から百二十センチくらいで、館林市の低地から千五百メートルを超す高山にまで生育域を広げており、初夏から秋にかけて花粉を飛ばしている。

 皮膚テストでは、ほかのいくつかのアレルゲンも陽性であったが、カモガヤのそれは群を抜いていた。カモガヤの茎葉は、やや青みがかって粉を吹いたような暗い緑色をしているので、小穂が出る前でも区別がつきやすい。キャンプ場など子供の集まるところでは、なるべく除去することが必要だと思う。

 人によってその抗原抗体反応の出方は違うであろうが、急激な反応を知ったカモガヤのアナフィラキシー・ショックが怖い。同じように、日本に在来のないドクムギ属のホソムギ、ネズミムギ、スズメノチャヒキ属のイヌムギ、ウシノケグサ属のオニウシノケグサなど、イネ科の帰化植物はわれわれの生活域に深く入り込んで、野山だけでなく、ひとたび空き地ができれば、そこへ侵入し、大繁殖を起こす。それに従って一年中、多量の花粉をばらまいているのを忘れてはならないであろう。

(上毛新聞 2006年3月5日掲載)