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明和町文化協会会長 山平 薫さん(明和町新里)

【略歴】広島県出身。旧制東海高等通信工学校(東海大短期大学部)卒。陸軍第6師団、逓信省、電電公社勤務を経て、現在オプティ・アパレル会長。随筆家、写真家。

ぼけ防止


◎グループに参加しよう

 日常生活の中で、健康維持に努めながら、ぼけ防止に役立つような家庭環境がつくれるなら、家族もきっと喜ぶだろう。  ぼけは薬では治らないようだ。物忘れが始まると、ぼけの始めといわれる。しかし、老人のぼけ原因は不明で、解明されていないそうだ。言えることは、食生活や運動不足に注意しながら、喫煙、過度の飲酒を控えて、精神的なストレスをためないことが、ぼけ防止の良薬と聞いたことがある。

 芸術家といわれる方たちを見ると、八十歳の高齢になってもぼけないで活躍している人たちを大勢見かける。常に、新境地を開こうと、頭と手足の双方を同時に使い、目的を持って観察し、創作に取り組んでいるため、ぼけの入り込む余地がないのではなかろうか。

 朝夕、散歩をするとき、漫然と歩くのではなく、四季折々に変化する情景を観察しながら、スケッチするのも楽しいものである。写真が好きな方は、カメラを片手に風景を撮ったり、草花、昆虫などを撮影するのも面白い。ねらった被写体の構図や露出を考えながら動き回れば、手足と頭の運動を同時に行うことになる。体のためにもよく、ぼけ防止につながるだろう。

 苦心の作品を他人から褒められようものなら、自信につながり、ストレスも一度に吹き飛んでしまう。作品は自分の宝として大切に保存しておくと、人生の一ページを飾ることができる。子や孫たちも喜ぶだろう。

 一般的に、男性より女性の方が心理的にも生理的にも強いといわれている。普段から洗濯、炊事、掃除、家計などに追われ、たえず体や手足を動かしているからか。

 中高年の女性の集まりなどを見ると、見知らぬ相手でもたちまち意気投合して、いろいろと話に花を咲かせている。一段落すると満足そうな笑みを浮かべ、生き生きしている。コミュニケーションの取り方が実にうまい。長生きする秘ひ訣けつかもしれない。

 男性の中には、みんなから離れて、一人で物思いにふけり、たばこをくゆらしている姿をよく見かける。定年前の地位が忘れられず、プライドが邪魔して、みんなとなじめないのだろうか。昔は昔、今は今と気持ちを切りかえて、多くの人と知り合えば、いろいろと知識も得られる。

 定年を迎えて、これから、どうしようかと迷ったときは、市町村教育委員会の生涯学習課の門をたたくとよい。中高年者が第二の人生を、いかに楽しく送っているかを教えてくれる。

 活動の中核をなす公民館では、定例的に講習会を開いたり、多くの自主グループが活動している。大別すると芸能部門、展示部門などがある。ときには精神訓話の講習もある。自分にあったグループを選択して参加するとよい。多くの友達ができ、楽しく学習することができる。結果的に、ぼけ防止に役立つとしたら、家族の笑顔も見られるだろう。

(上毛新聞 2006年3月6日掲載)