視点 オピニオン21
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NPO法人源流理事 豊原  稔さん(高崎市倉渕町)

【略歴】榛名高校卒。製紙会社や企画会社などを経て、スポンサーだった「はまゆう山荘」に勤務。趣味は山登り。「源流」では特徴ある地域づくりに汗を流す。

パラグライダー


◎自然への謙虚さ持って

榛名山上空二千メートル付近を風にのってパラグライダーで飛ぶと、眼下に榛名富士・榛名湖を中心にしたカルデラ・外輪山の大パノラマが広がります。フライトするたびに大自然の造形の偉大さに感動し、山々の生い立ちにも興味がわいて、自然に関する出来事や時の流れに関心を持ち、学ぶことの本当の楽しさを知ることできます。
 パラグライダーは機体によって性能は違いますが、一秒間におよそ一メートル下降し、上昇気流が一秒間に二メートル上昇していれば、プラスマイナスでプラス一メートル上昇することになります。上昇気流は天候、温度、日差しの強さ、風向きによって発生が左右されます。目には見えませんが、あるであろう上昇気流を予想しフライトします。トンビがくるくると回っているのは、上昇気流帯から出ないように旋回しているわけです。よく観察すると、真っすぐ上がるわけでなく風に流されていることにも気づくことでしょう。山の斜面中腹から上昇気流に合わせてテイクオフ(離陸)すれば、気流に乗ってぐんぐんと上がってゆき、プラス七メートルぐらいの上昇で数分後には千メートルも上がってゆくこともあります。
 私が始めた一九八九年ごろに比べると、フライトエリアも各地にでき、スクールのインストラクターも熟練者で経験豊富な方が増え、カリキュラムも整い、機体性能や安全性も格段に高まりました。しかし、今も自然に対する謙虚さを忘れてはいけませんし、一つ間違えば大きい事故につながります。
 昨今、新聞記事に「パラグライダー墜落 重傷」というように原因を明確に書かない記事が目に入りますが、「パラグライダー=危険」と誤解されかねないことになりますので、報道には注意してほしいと思います。
 パラグライダーの愛好者は十代から八十代まで、四分の一は女性が占めています。中には定年後のご夫婦で、遠方から車で通わなくてはならないため、だんなさん一人では運転が大変と車の免許を取得したご婦人もいます。そのプラス思考のパワーに驚かせられますし、それだけパラグライダーに魅力があるということでしょう。
 よくハンググライダーと勘違いされますが、ハングは海の魚のエイみたいな格好で機体を支えるホネがあり、持ち運びには車等を必要とします。滑空性能はパラグライダーの二倍ほど。パラグライダーはホネのないクラゲみたいな感じで、持ち運びが比較的容易です。
 パラグライダーの操縦は単純で、両手に持つブレークコードと呼ばれる操縦用のひもを操作するだけ。右のブレークコードを引くと右に曲がり、左を引けば左に曲がります。生物進化の過程で人は飛ぶことのできる遺伝子を持っているわけではないのに、パラグライダーで空を舞うことができます。「飛びたい」という気持ちがあれば、誰でも必ず飛べます。高く舞い上がって下界をゆったり見渡し、新しい自分発見のフライトをしてみませんか。

(上毛新聞 2006年3月13日掲載)