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はるなみずべ楽会会長 戸塚 歳男さん(榛名町高浜)

【略歴】高崎経済大卒。現像会社や写真のアシスタントを経て写真館を経営。その傍らカナディアンカヌーに魅せられ、水と自然に癒やされる生活を送っている。

「癒やしの里」


◎枠組みの変化を転機に

「一歩出遅れてしまいましたが、榛名町も高崎市との合併が決まりました。
 合併先行地域を見ると、しこりを残したまま何の手も打てず、数年で過疎状態になってしまった地域も見られます。榛名町でも、過疎化への要素が十分にあることは怖いことです。
 合併前の現在でも、経済競争の敗北や後継者不足によって、山林の手入れが行き届かず、田畑でさえ荒れている場所が見受けられるからです。
 梅の木を切り、良質の土を売り、質の悪い土で埋め戻された土地は、今後、どれくらいのお荷物になってしまうのでしょう。
 荒廃した土地は災害にも弱く、フィリピン・レイテ島で多数の犠牲者を出してしまった地滑りの原因の一つになっているようです。河川の上流域や中流域、および周囲の山林や田畑を保全することは、良質の水や食べ物を供給することだけではなく、防災の役割をも果たすことになります。
 幸いにして、榛名町は比較的災害が少ない地域でしたが、今後、より厳しい経済競争に巻き込まれたり、少子高齢化、団塊の世代が定年退職で大量退場する二〇〇七年問題、地球温暖化による気候の変化等の荒波にも耐えていかなくてはならなくなるでしょう。
 近ごろは、健康志向のコマーシャルが数多く見受けられますが、その経済活動は多数の不健康な人々がいるから、成り立っているのだと思います。
 また、最近の内閣府の世論調査によると、週末の田舎暮らしを望む人は37・6%で、定住を希望する人は20・6%もいます。特に団塊世代では、それぞれ45・5%、28・5%と、高い数字を示しています。
 定住のためには、医療機関の整備(43・8%)、安価な土地、建物(43・3%)が必要と答えていますが、この課題は解決不可能な課題ではないと思います。
 災害にも強く、四季折々の景観も美しい。取れたてのおいしい農産物と普段の食事(スローフード)が健康をはぐくみ、音楽や絵画、工芸品が生活に花を添える。人々は優しく、活気があり、散策コースにも事欠かない。疲れたら近くの温泉へ―。そんな「癒やしの里」へのニーズは、たくさんあると思います。
 広域の公共施設として、ごみ焼却場がありますが、単なる「ごみの町」にはしたくありません。
 標高差は千メートル以上もあり、地域によってさまざまな事情もあると思いますが、枠組みの変化をチャンスと考えて、知恵を出し合いましょう。身の丈に合った分かりやすいビジョンを定め、ルールを決めて協力しながら実行し、修正していく。そうした活動の中から、活性化への糸口がきっと見つかると思います。

(上毛新聞 2006年3月15日掲載)