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さんすい森のリゾート社長 山田 直彦さん(みなかみ町湯原)

【略歴】法政大建築学科卒。東京でホテル経営のコンサルタント会社に6年間勤務後、帰郷してピザ専門店と和食の店を経営。湯原温泉街振興会副会長。

周遊・滞在型へ転換を


◎新・みなかみ町の観光

昨年十月、私の住む水上町は隣接する月夜野町、新治村と合併し、新しく「みなかみ町」として生まれ変わりました。新町のビジョンとしては、観光と農業を軸とした産業振興に取り組んでいくことを打ち出しています。われわれ観光産業を営む者としては大変ありがたいことであり、個人的にもそうあるべきだと考えます。
 みなかみ町には、谷川連峰や利根川を中心とする大自然と、点在する温泉、歴史、文化、おいしい食べ物などたくさんの宝物(観光資源)が存在します。さらに四季がはっきりしていて、それぞれの季節感を十分楽しむこともできます。そして何より、都心からのアクセスがよく、気軽に訪れることのできる本当に素晴らしいところです。以前、東京で暮らしていたことがあるので、なおさらそう感じるのかもしれません。観光地としてはやや停滞気味ですが、それはそういった宝物が十分に生かされていないからだと思います。
 この町は高速道路や新幹線の発達に伴い、従来の宿泊型から日帰り型の観光地へとシフトしてきました。しかし、今回の合併でより広域な観光エリアへと拡大しました。これを機に日帰りでは楽しみきれない周遊・滞在型の宿泊観光地へと転換できればと考えます。
 そのために、この地域に点在する宝物を再整理して、客層やニーズに合わせた観光ルートを設定したらどうかと思います。大切なのは「お客さまの立場」で楽しさを考えることです。そして、観光ルートを巡る交通手段、例えば旧水上町で実施されてきた「乗り降り自由のシャトルバス」のようなものを考えるべきでしょう。JR利用のお客さまは、これからも貴重です。これらの観光情報を必要とするお客さまに対して、的確に分かりやすく情報発信します。優れた資源も知られなければ「宝の持ち腐れ」です。
 また、再度来ていただけるよう顧客管理を徹底し、みなかみ町の「おなじみさん」を育て、お客さまの意見を大切にして、一緒に観光地をつくっていくことが必要でしょう。
 こうした提案はほんの一例で、みんなで考えればたくさんのアイデアが出てくると思います。昨年、合併を前に「観光振興等活性化委員会」が開催され、今後のみなかみ町の観光の在り方について、いろいろと意見交換がなされました。そしてこの委員会を受けて「みなかみ町観光を考える100人会議」が近々組織される予定です。そこでまた、さまざまな意見が出されることになりますが、それら意見を一つ一つ具体化して、誰がどのように実行していくかが重要となります。
 やはり、これからの町づくりは、行政に任せきりにするのではなく、われわれ民間が主体となって進めていかなければなりません。行政の協力のもと、民間の力で魅力あるみなかみ町を考え、つくっていく。これが「新町みなかみ」の観光を考えていく上で、絶対不可欠な条件であると考えます。

(上毛新聞 2006年3月22日掲載)