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オーエックス関東代表取締役 生方 潤一さん(伊勢崎市東町)

【略歴】足尾町出身。元国際A級ライダー。92年に脊髄(せきずい)損傷後、伊勢崎市で車いす販売とレース参加支援の会社を創立。ぐんま障害者スポーツ・サポート“41”理事。


カートライセンス

◎昇格目指し更新続ける

 二〇〇六年、僕のレーシングカートシーズンが始まった。今年で何年になるだろう。

 車いす生活になってから、モータースポーツはできないと思っていたが、あきらめきれず、一九九六年にレーシングカートを手で操作できるよう改造。カートは右足がアクセルで、左足がブレーキ。いたってシンプルな乗り物なので、ハンドドライブにしやすかった。久しぶりにサーキットを走り、もう体感することができない、と思っていた風を再び感じとることができた。

 そして、人は不思議なことに、さらに挑戦をしたくなる。走れただけでは満足できず、レース参加を望むようになった。そのためには、日本自動車連盟(JAF)のライセンスが必要だった。しかし、障害者には発給してくれなかった。理由は前例がない、危険回避を自分でできない―などで、発給に非協力的だった。実際に走っている様子を見てもらい、安全面でも言われる部分はすべて改造した。この間、何度もお願いをし、三年後の九九年にカートライセンス国内Bの発給を受けた。うれしかった。

 しかし、このライセンスには一般のレースには参加できないという限定があった。ハンドカートだけ、障害者だけでレースをしなさいというもので、当然、勝ってもライセンス昇格ができない。そのため、参加する仲間は減ってきた。自分が障害者であることを位置付けるためにライセンス発給を望んだわけではない。

 周囲からは「JAFにお金を払わされているだけなんじゃないの?」と言われる。毎年、年会費と更新料を払っている。しかし、昇格もできなければ、一般のレースにも参加できないのだから、この疑問、分からないでもない。笑い話だが、こんなこともあった。カートコースで自動車の鍵をトランクの中に入れてしまったとき、JAFを呼んで開けてもらった。仲間に「JAFにお金を払っていてよかったじゃん」「カートで使えない効力を使えたじゃん」と言われた。何のためのライセンスだったのだろう?

 ただ、最近では、クローズドレースは主催者が認めてくれ、一般レースへの参加ができる。それは主催者主体のレースなのでライセンスは必要ないからだ。でも、僕はJAFライセンスを更新し続ける。認めてもらい、昇格を目指すために。

 昨年からNPO(民間非営利団体)法人ハンドドライブクロス(HDX)主催で、スーパーGTと並行する形でサーキットカートレースが実施され、僕も参加している。HDXレースは文部科学大臣杯となっていて、青少年、健常者、障害者の共生を目標とし、ハンドカートを使用する。スーパーGTの走るコースは練習走行すら許されない状況だったが、そのサーキットでレースができるようになってきたことは、今までのモータースポーツに新風を吹き込んだことになる。

 十年目、僕を応援してくれている人たちとあきらめることなく、チャレンジをしていきたいと思う。









(上毛新聞 2006年4月15日掲載)