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平方学園創世中等教育学校長 桜井 直紀さん(前橋市青梨子町)

【略歴】東京教育大卒。高校教諭、県教委青少年課長、学校指導課長、沼田女子高校長、高崎高校長を経て前橋市教育長。05年から現職。県子育連学術委員。


学力低下問題

◎教職員を理解し保証を

 学校週五日制に関係しての学力低下の問題が言われて久しく、その対応として学校を以前の六日制に戻す話も出ている。現に土曜日に授業を実施している学校もあり、また、補習の名目で希望者(全員のこともある)を集めて実質的に授業を行っている学校もある。

 学校週五日制のスタートのときには、子供の生活にゆとりを持たせる、地域社会で子供を育てる、親子の対話時間を増やすなどが、また、その後の学習指導要領の改定では生きる力を育成するなどが言われてきた。

 しかし、学校週五日制の基盤には、働く人々の週四十時間の労働や週休二日制の問題があり、すでに社会の大きな流れの時代となっていた。公務員の勤務もこの流れに沿っていくことは当然であり、学校に勤務する職員に対しても適用されるものであった。

 教職員の勤務時間の問題を表面に出さずに、子供にゆとりある生活をさせる、生きる力を育成するなどと、「言葉の上」で対処しようと考えてきたことに無理があったのではないか。例えば、学力の問題を算数・数学での計算する力や、国語の漢字が書けることなどに限定しても、授業時間の減少の分だけでも学校での練習量は少なくなり、定着度は低下すると思われる。

 また、思考力や創造性の育成などは「読み、書き、そろばん」の言葉に代表されようなものが基盤となり、このような上に育成されるものである。生きる力の育成については児童生徒の不登校や問題行動などから見ても厳しい状況にある。

 学力の問題への対応の一つとして冒頭でも述べたが、一日の授業時間を増やす、夏季休業の日数を見直す、土曜・日曜日に授業や補習を行うなどが考えられる。そして、このような取り組みは一部の学校ではすでに行われており、その成果はこれから表れることになる。また、これらに伴う課題として授業時間は確保できるが、それに対応できるだけの子供の体力や能力があるのか、今までに培ってきた土曜日などの地域社会の受け入れ体制はどうなるのか、中学校や高校では部活動への影響はどうなるのかなども指摘される。

 さらには、教職員の授業増への対応、土曜日等の使用になれば勤務の問題もあり、その際には、教職員の労働時間の問題をしっかりと押さえて論ずべきである。現に行われている部活動の指導が教職員の奉仕的な面に頼っているのと同様に考えてはいけない問題である。

 学校週五日制に端を発した学力問題であるが、これを考える上では児童生徒の日々の教育活動に長時間にわたって取り組んでいる教職員が気持ちよく業務に取り組めるよう、その勤務の問題を行政も保護者も、正しく、しっかりと理解するとともに、きちんと保証していくことが一番大切なことである。この点を十分に考慮せずに、言葉の上や表面的に学力問題を論じたところで、ものごとの本質的な解決には結びつかないのではないか。










(上毛新聞 2006年4月17日掲載)