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県環境アドバイザー連絡協議会代表 鈴木 克彬さん(富士見村石井)

【略歴】成城大卒。元ナカヨエンジニアリング社長。県環境アドバイザー連絡協議会代表、ぐんま日独協会事務局長、前橋市フォークダンス協会副会長。

ドイツ方式を見習おう

◎W杯サッカーと環境

 ドイツで今年開催されるサッカーのワールドカップ(W杯)。この大会には、地元ドイツはもとより、世界各国から約三百万人の観戦者が見込まれている。その開催に伴うエネルギーの消費など環境への負荷は大変大きいと思う。それに対し、環境先進国といわれるドイツはどのような考え方で、その対策に立ち向かうのか、私には関心事であった。

 そこで、以前から親交のあったドイツ環境省のブレーン会社(頭脳集団)であるECOSの役員に、その施策を尋ねた。その結果「ドイツでは、全サッカー場に対し、環境面から三つのコンセプト(理念)を設け、実施する」とのことであった。今回はその内容を記述し、通常の日本的発想と比較しながら、皆さんと一緒に考えてみたいと思う。

 まず最初に説明があったのは、「この大会のために、新たな駐車場の確保はしない。それよりも、さらに公共交通機関の整備に投資を行い、来場者への一層の利便性アップに重点を置く」とのことであった。それは二酸化炭素の削減にも役立つし、多くのサッカーファンにも喜んでもらえるだろう、と力説された。

 一方、日本では多くの人が集まる施設を造る場合、どうしても初めから駐車場確保という固定観念が先行し、施設は郊外に建設されることが多い。そのため、車利用者が増える一方、車のない人は不便となる。また、市街地の過疎化にも拍車をかけるという悪循環になっているのではないか…。私には、スタートの理念から違いがあると感じられた。

 次の合意事項は、ビールやコーラ飲料など飲料用のすべての容器をデポジット制(預かり金制度)とし、「使い捨て容器は使用しない」とのこと。その仕組みは、観客は購入時に容器代も一緒に支払い、飲み終わった後、使用済みのカップやボトルなどを決められたところに戻すと、その容器代が返金される。さらにこの制度は容器が戻り、またポイ捨て防止にも役立つので、ごみの発生抑制となり、清掃作業の経費も削減されるという。一方、返却を忘れる人もいるが、預かり金があるので、清掃を外部に委託しても十分ペイするとのこと。

 片や日本では、イベントがあると、ごみが大量発生し、その後、片付けは役員・関係者の大仕事というパターンが定着している。そこで、昨年十月の県環境フェスティバルのイベント時に、県当局を中心にドイツ方式を見習い、焼きそば、焼きまんじゅうなどの容器のデポジット制を試験的に実施した。結果は大成功で、ごみは大幅に削減された。この制度用の容器は県環境政策課に保管されているので、県内でも大いに利用してほしいと思っている。

 三つ目は雨水の利用。トイレの水洗およびグラウンドの芝用散布は水道水を使わず、雨水利用を徹底するとのこと。地球規模で砂漠化が進んでいる今日、水が豊かな日本と違って合理性を追求し、ものを大切にするドイツ人にとっては当然の発想だと思う。果たして日本人は、どれだけ雨水を活用しているのだろうか…。以上、大きなイベントなどでもスタートからの理念に、日独で大きな違いがあると感じられた。















(上毛新聞 2006年4月30日掲載)