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サポートハウスなずな理事長 福島 知津子さん(渋川市祖母島)

【略歴】立正大、仏教大卒。精神保健ボランティア活動を通じて障害者と出会い、NPO法人サポートハウスなずな設立。障害者の地域での生活をサポートしている。


通所介助

◎自信につながる援助を

 新緑の季節となり、ようやく慣れてきたのか、真新しいかばんで作業所近くの通学路を登校していく小学一年生の姿がほほえましい。一時預かりを頼まれた中学一年生の男の子が、学生服姿でサポートハウスなずなに来たとき、思わず「かっこいい!」と叫んでしまった。四月一日から始まった障害者自立支援法は、いろいろと迷走しているが、現場は相変わらずにぎやかで、希望にあふれている。

 昨年十月一日にスタートしたグループホームは、民間の助成金をいただくことができ、台所とトイレが見違えるようにきれいになった。三年前、住居のない人がいて、自治会長さんをはじめ、地域の方の協力で一軒家をお借りすることができた。何もないところからの出発だったので、布団や日用品、家電製品等はすべて寄付していただいた。たくさんの支えがあり、今のグループホームにつながっている。

 グループホームは八畳の個室が四部屋あり、現在三人のメンバーが住んでいる。世話人さんを中心に、なずなファミリーが育っている。一人一人、生活歴の違う人が同居することでの心配は、少しの我慢、少しの思いやりがあるかどうかである。また、自分でできることを一つ一つ増やしていく意欲も必要である。それ以上に、肉親から離れられるかということもポイントとなる。

 メンバーは年金もしくは生活保護費で生活している。支援法の応益負担は、グループホームの人たちにとってはきつい。世話人さんと、知恵と工夫で乗り切ってほしいものである。

 生活していく上で、障害者手帳の内容の格差が大きく影響していることをご存じだろうか。通勤費が半額か全額かでは大きく違う。利用者負担の問題から援助者の身分保障の問題まで、現場は悩んでいる。自己責任社会の徹底は、人間を大事にするだろうか。国をつくるのも人。人間が一番大事のはずだが…。

 心が寒くなりそうなので、ホットな話を一つ。四月に新たに作業所に加わったメンバーの中で、通所介助が現在進行中だ。高校を卒業した男子で、通所の初日、生まれて初めて一人でバスに乗ったという。今後のことについて、その子といろいろと話し合った。たくさん課題はあるが、自分で意欲的になっている姿は男らしく、かっこいいなあと思った。

 でも、つらさもある自分への課題に、一筋の涙が…。通所介助の数を重ねるたびに親の心配は大きくなり、指導員に「家に帰ってくるとヘトヘトになって、足はあざだらけです」と伝えたようだ。昼休みに足をマッサージしていることもあり、「どう、疲れて大変?」と聞くと、その子は「大丈夫です」とにこにこしている。親の援助から離れ、自分でできることを見つけようとしているけなげさに、今後どう援助したら、その子の自信につながっていくだろうか、と思うこのごろである。

 立ち木の若葉が芽吹くように、障害と付き合いながら、たくさんの可能性を試してあげたい。










(上毛新聞 2006年5月16日掲載)