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三宿病院薬局長 鎌田 泉さん(東京都大田区)

【略歴】桐生市出身。桐生女子高、東京理科大薬学部卒業後、薬剤師国家試験合格。国家公務員共済組合連合会虎の門病院勤務を経て、03年から三宿病院薬局長。


後発医薬品

◎納得した上で使いたい

 私の勤務先の外来薬は「院外処方」です。処方せんをお渡しする際、患者さんには当院以外の受診もすべて依頼できる「かかりつけ薬局」を決めるようお勧めしています。受診先が一つなら病院付近の薬局が、受診先が複数なら勤務先や住居近辺で、何でも相談できて長く付き合える薬局が便利です。「かかりつけ薬局」の重要な任務は、調剤に加え複数受診による重複処方や相互作用、副作用から患者さんを守ることです。

 また、かかりつけ薬局では、医薬品費についても相談に乗れます。本年四月から外来処方せんには「後発(ジェネリック)医薬品への変更可」という欄ができました。「患者さんの希望により」医師が署名すれば、銘柄を指定しなくても薬局で後発品に切り替えられる新しい制度です。後発品は新薬(先発品)の特許切れにより発売され、先発品の七割以下という低価格が特徴です。薬の値段である薬価を決める仕組みは複雑です。長い時間をかけて薬価は徐々に下がりますが、医薬品は研究開発費用の面からも高額商品であることに違いはありません。後発品の使用促進で医療費を抑制することが政府の方針です。

 では、後発品にはどんな意味があるでしょう。薬代の節約はメリットです。しかし「安かったけれど、効かなかった」では困ります。後発品も厚生労働省が認めた医薬品ですが、使用成績に関しては未知数の部分があります。既に多くの使用実績のある先発品とは、そこが大きく違います。添加剤が異なるなどの理由で、副作用の種類や頻度が変わる可能性があります。さらに難しいのが「主成分の含量が同じ」だけで評価できない技術面なのです。

 一例として、「アダラート」という代表的な血圧の薬で説明しましょう。アダラートは油状成分をゼラチンに閉じ込めた軟カプセルと錠剤二種類(L、CR)の三つの型が販売されています。これらは吸収速度に差があり、効果発現は軟カプセルが最も速いのですが、症状によっては一日に何回か服用しなくてはなりません。錠剤のLからCRになるに従い、逆にゆっくり吸収させ持続時間を長引かせる加工が施してあり、カプセルに比べ少ない服用回数で効果が持続します。このように細やかな技術に支えられて製剤化される医薬品の場合、主成分は同量と保証できても、効き目も同等といえる後発品が別のメーカーでつくられるのか、少し疑問に感じるのです。

 私自身も後発品導入には積極的に取り組んでいます。大切なのはメリット・デメリットを検討し、納得した上で使うことです。今回の「後発品への変更可」の新制度は「患者さんの希望により」運用されます。経済性のみに目を奪われないよう注意が必要です。鎮痛剤など効果が実感できる、血圧や血糖値など数値で評価できる―といった薬剤から試すのも一つの方法です。患者さんの体験に基づく意見の集約により初めて、医療も、制度も方向性が定まり、進歩していくと考えます。











(上毛新聞 2006年5月17日掲載)