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野本クリニック院長 野本 文幸さん(前橋市城東町)

【略歴】前橋高、北海道大医学部卒。NPO法人波宜亭倶楽部理事長、前橋市まちづくりにぎわい再生計画プロジェクトチームグランドデザイングループ座長。


30年前の利用券

◎親しまれてきた証し

 四月一日から前橋るなぱあく(中央児童遊園)の運営・管理を波宜亭(はぎてい)倶楽部が行っております。実際にかかわってみると、多くの発見や驚きがあります。驚きの一つは、昔の利用券(切符)が予想以上に多いことでした。るなぱあくのホームページ(URL http‥//www.lunarpark.jp/)四月六日付の佐藤恭一園長のブログには、三枚一組百円の昔の利用券を百八十二枚も持参されたお客さまの話題が載っています。これは一回四十円のときのものです。

 それよりも古い一回二十円時代の六枚一組百円の利用回数券も四月一日以降に三十枚以上ありました。サル、ゾウ、キリンなどが遊具に乗った漫画風のかわいい絵柄で、一枚一枚の図柄が異なっています。色は紫を基調としていて、左側に白い丸があり、その丸の中にアルファベットの「M」の字があります。白い丸は市章の「輪貫(わぬき)」、中のMは前橋市か前橋市中央児童遊園を表していると推測されます。

 六枚一組百円というのはいつごろのものか、興味がわいて市の公園緑地課にお聞きしたところ、るなぱあくの利用料金は次のように変遷しています。昭和二十九年の開園当初は一回十円(回数券は六枚一組五十円)、同四十八年から一回二十円(六枚一組百円)、同五十一年から一回四十円(三枚一組百円)、平成十四年から現在と同じ一回五十円(十一枚一組五百円)になっています。

 つまり六枚一組百円の回数券は、新しいとしても昭和五十一年のものであり、今から三十年以上も前の回数券ということになります。

 三十年前に回数券を購入したのが、お母さんとそのお子さんだとすると、当時のお母さんはおばあちゃんになり、お子さんは親になっていますし、今回三十年前の券を使って今のお子さんが遊具に乗ったのでしょうから、単純に考えても、この一枚の券に祖父母、両親、子供の三世代が関係していることが分かります。

 三十年前の券が今も使われていることは、るなぱあく以外の場所では極めて珍しいでしょう。るなぱあくがそれだけ長く市民に親しまれてきた証しですし、私たちがるなぱあくを「にっぽんいち なつかしい ゆうえんち」と呼んでいることにも通じます。

 ただ、昭和二十九―四十八年まで二十年間にわたる十円時代の利用券は現在のところ見つかっていません。私はひそかに十円券を「幻の利用券」と呼んでいます。もし、十円券が見つかったら、利用券の変遷を展示して皆さまに見ていただく計画を立てています。利用券の変遷は、るなぱあくの歴史。そういう、ささやかなことを大切にすることが、前橋というまちを大切に思うことにつながっていく、と私は考えます。

 るなぱあくでは、十円券でも二十円券でも当時の値段に関係なく、一枚で一つの大型遊具をご利用いただけます。十円時代の利用券をお持ちの方は、いらっしゃいませんか?













(上毛新聞 2006年5月26日掲載)