視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
県環境アドバイザー連絡協議会代表 鈴木 克彬さん(富士見村石井)

【略歴】成城大卒。元ナカヨエンジニアリング社長。県環境アドバイザー連絡協議会代表、ぐんま日独協会事務局長、前橋市フォークダンス協会副会長。


グローバル社会

◎日本の文化を見直そう

 数年前、私は外国の友人を案内して東京のはとバス(英語案内)に乗ったことがある。コースは東京タワーの見学からスタートし、皇居前、東京駅前、浅草仲見世、銀座下車であった。この通り一遍のコースを回って、私はこれで日本国の、日本文化の紹介になるのか、あらためて考えさせられることがあった。

 一般的に日本人は外国に行く場合、訪問国から何かを学びたい、体験したい、と好奇心を持って出かけると思う。一方、外国人も日本を訪れる場合、私の知る限り、同じように「科学技術先進国で、GNP(国民総生産)大国の日本からそのノウハウを学びたい」と思って訪日する人が多い。それに対し、私たち日本人は訪問者の気持ち、要望などを推察し、適切に対応しているだろうか。あらためて考える必要がある。

 私は日本のよき文化の理解者を増やすため、外国の方々に日本庭園を見に行くことを機会あるごとに勧めている。そして、その特徴として「日本庭園は原則的にノーフラワーで、木と水と石で構成されている。外国のようにバラやチューリップなど季節ごとの草花はない」、さらに「四季それぞれに対応するとともに、月の光や冬の雪景色まで考えて構築されている」と説明している。

 半信半疑に私の話を聞く外国人は、後刻、東京深川の清澄庭園や芝恩賜公園などコンパクトな日本庭園を案内すると、その奥深い構想力に感嘆し、すっかり日本の伝統文化のファンになってしまう。皆さんもご存じのように、現在、諸外国のいくつかの都市に日本庭園が存在するのは、過去に来日され、庭園を見学した外国人がその素晴らしさにほれ込み、自分の地域に造られたものと推察する。

 一方、わが家に外国の方がみえたときに、お願いしていることを紹介したい。家に上がるとき、私は履物の向きを直してもらっている。そして、日常生活の中で整理整頓の習慣を身に付ける教えである、と説明している。これを受けたほとんどの外国人は、素直に感心し、即座に履物の向きを直し、納得してくれる。これも、わが国に伝わる生活習慣の一つであり、古き、よき文化だと思っている。

 そもそも日本人は、狩猟、農耕、遊牧という民族ジャンルに分けると、農耕民族に入ると思う。そして、この民族は「種まき」とか「配膳(はいぜん)八分の作業二分」という言葉がよく使われるように、次の行動や収穫のための準備や事前に手を打つ知恵を生活の中で学んできた。しかし、昨今の日本の状態はどうだろうか。一つ、玄関やトイレの履物にとどまらず、家庭でも公共施設でも、いろいろなことが乱れ、「…ぱなし」が広がっているのは残念なことだ。

 これからのグローバル社会の中で、世界の人々とお付き合いをしていくには、私たち日本人一人一人が自国の文化、伝統を再認識し、その上でお互いの長所を認め合っての交流が大切だと感じている。






(上毛新聞 2006年6月12日掲載)