視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
オーエックス関東代表取締役 生方 潤一さん(伊勢崎市東町)

【略歴】足尾町出身。元国際A級ライダー。92年に脊髄(せきずい)損傷後、伊勢崎市で車いす販売とレース参加支援の会社を創立。ぐんま障害者スポーツ・サポート“41”理事。


車いすの開発

◎自立の契機になれば

 「福祉先進国」をインターネットで検索すると、北欧三国のほか、カナダ、ドイツなどが出てくる。日本はどうなのだろう。今回は、僕にとって三百六十五日、一日も欠かせない車いすについて触れてみようと思う。

 僕が脊髄(せきずい)損傷になり、車いすを日常的に利用し始めたのは一九九二年五月からだった。それまで、病院で見かける、あの大きなものがずっと車いすだと思っていた。もちろん、その大きな車いすでリハビリに励んだ。以前、この欄(一月六日付)で社会復帰するための壁について述べたが、車いすもその一つだ。「ここがこんな感じで、あそこがこう…」。病院生活中、車いすに対し、いろいろ感じる部分があり、それが車いすの開発設計に携わるきっかけとなった。

 現在、僕が販売しているOX製(メードイン千葉)の車いすにも、その当時、意見や提案をして僕の障害の状態や体のサイズに合ったモジュラー型車いすを製作してもらい、病院で使用していたものから「自分の車いす」に乗り換えて、初めて自由を感じることができた。それまで鎖につながれたようで、動くことが苦痛だったが、自分の手足のように動かすことができた。

 ところで、福祉先進国で多くの障害者・高齢者が使用しているモジュラー型車いすとは何だろう。僕たちのような障害があるものは身体障害者福祉法の「補装具給付制度」により、国と地方自治体の助成を受けて五年に一回、車いすが交付される。その制度には「レディーメード型」「オーダーメード型」「モジュラー型」の車いすがある。

 レディーメード型は、「標準的な既製品」とされ、不特定多数の人が使用できることを目的としており、調整機能はほとんどない。オーダーメードは使用者の身体サイズや障害の状態などに合わせ、更生相談所の医師らにより身体測定なども行われ、細かく製作される。ただ、一度出来上がった車いすは身体状況や障害状況が変化しても、機能やサイズを変更することはできない。作り直しということも多くある。

 しかし、モジュラー型は、複数の機能やサイズのモジュール(部品)が用意されており、使用者の身体状況に応じ部品の選択、長さや角度の調節ができる。また、走行特性を変化させることもでき、デザインも選べる。しかも軽量だ。僕が脊髄損傷になった当時は、なかなか身体障害者福祉法枠内と認められなかったモジュラー型も、今ではどの地方自治体も認めている。

 僕の仕事先に国立リハビリテーションセンターがあり、諸先生方にご意見をいただきながら、この型の車いすを製作している。このセンターで初めて車いすを使用する方には、調整がしっかりできる車いすとして高く評価されている。また、モジュラー型を利用する高齢者も増えている。

 後日、触れてみたいと思うが、高齢者こそモジュラー型だと僕は感じる。日本は福祉後進国かというと、実態はそうでもないと思う。ただ、一部の公のホームページに、モジュラー型は身体障害者福祉法の枠内ではないなどと読み違えるようなことが記載されている。少々心配になるが、僕は自立のきっかけになるような車いすの開発をこれからも手掛けたいと考えている。






(上毛新聞 2006年6月25日掲載)