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弁理士・羽鳥国際特許商標事務所長 羽鳥 亘さん(前橋市北代田町)

【略歴】成蹊大法卒。旧東京三洋電機特許部を経て87年独立。県知的財産戦略会議委員、日本弁理士会小中高支援チームリーダー、県高等学校PTA連合会顧問も務める。


地域団体商標

◎一層のブランド保護を

 四月から商標法が一部改正されて「上州牛」のように、地名と商品名を組み合わせた地域ブランドが「地域団体商標」として商標登録されやすくなりました。

 従来の商標法の規定では、地名と商品名を組み合わせた商標は、「夕張メロン」や「西陣織」のように、「全国的に知らない人がいないほど著名な商標になっている」という厳しい条件に適合した場合に限り、特許庁が商標登録を認めていました。

 四月から実施された「地域団体商標」では、(1)事業協同組合や農協などの団体による出願であること(2)地名(上州のような旧地名も含む)と商品・サービス名(「牛」=牛肉のように慣用名も含む)からなる商標(例えば「上州牛」)であること(3)使用され、周知されている(例えば、隣接都道府県に及ぶ程度の需要者に広く認識)こと―等の条件を満たしている場合に、商標登録が認められるようになりました。

 このようにして商標登録が認められると、無断使用を行っている者に対し、商標権に基づいて迅速に警告を行い、無断商標使用者の使用差し止めや損害賠償請求を行うことができます。

 また、「地域団体商標」の権利取得を行うことにより、事業協同組合等に多くの参加者を集めることができ、さらには、「地域団体商標」を使用する商品の品質の統一や向上について、事業者全員の意識を高めることができるという副次的効果も期待されています。

 半面、地域ブランド化の取り組みに際しては、民間、行政、事業組合等が協力して地域の特性を生かした商品の生産・PR等を行っていることが多いという現実に反して、法律上「地域団体商標」の登録ができるのは、事業協同組合等に限定されています。

 すなわち、民間企業や、県市町村、商工会議所などは「地域団体商標」の登録を受けることができないため、現状に即した保護を十分図ることができるのか疑問であるとの指摘もあり、今後の課題となっています。

 なお、この「地域団体商標」の定義には直接該当しませんが、最近の県内農産物で使用されている商標登録の事例として、JA利根沼田のトマト「夏美人」、JA佐波伊勢崎の同「初恋物語」、JAあがつまの同「赤ずきん」等があり、同じトマトでも県内各産地で独自に商標登録を行い、商品の差別化を図るとともに、品質の均一化を図っている傾向が最近増えています。

 今回の「地域団体商標」の法律改正を機に、県内全域で、広い意味での「ぐんまブランド」保護をより一層推進してもらいたいものです。






(上毛新聞 2006年7月5日掲載)