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平方学園創世中等教育学校長 桜井 直紀さん(前橋市青梨子町)

【略歴】東京教育大卒。高校教諭、県教委青少年課長、学校指導課長、沼田女子高校長、高崎高校長を経て前橋市教育長。05年から現職。県子育連学術委員。


子供の育成

◎社会全体で支援しよう

 子供の育成をめぐっての話題は新聞、テレビ、ラジオ等でよく取り上げられており、その内容もボランティアやスポーツ・文化活動、不登校、学力低下、非行、指導力不足教員等と多岐にわたっている。これらは子供の育成に対する関心の高さを示している。

 子供が伸長し、成長していく上で学校や地域社会の果たす役割には大きなものがある。これらが成果を挙げる上での基盤となるものは、基本的なしつけを身に付けていること、善悪の判断ができること、少々の苦しさに耐えることなどである。いずれも子供の発達段階に応じた養育がどのようになされてきたのか、にかかっている。これらの基本的なことは幼児期に育成されるといわれている。この時期の子供への対応が大切なわけであるが、何かが発生したときや気が付いたときに幼児期にまで戻ることはできないのも事実である。

 しかし、子供が成長する、そのときどきに応じ、人間としての生き方の基本的な事項を理解させ、実践させる親であることはできる。また、親として仮に今までの養育に過ちの面があれば自らを反省し、今までの方針を修正することや、場合によっては子供に謝罪することもできるのである。親がこの点をしっかりと認識して対応すれば、子供はたとえ問題を起こしたとしても立ち直れるものと信じている。

 個人の権利が優先し、小さいときからの子育てのことは忘れてしまい、子供の問題を他人の責任にしたり、また、この延長線上で学校や先生を対象にすることが多くなりつつある。このような中で、内容的には学校や先生に対する「たたき」の感が強くなっているのではないか。これでは、先生方は本来的に果たすべき仕事への取り組みに委縮してしまい、結果として子供の成長にも、わが国の将来にとっても大きな損失となってしまう。

 教員の中にも問題がある人もいようが、全体から見れば、ほんの一握りである。その中には教師批判により、心身ともに疲れている人もいると思われる。しかし、大多数の先生方は昼休みもなしに児童や生徒の指導に労を惜しまずに当たっているし、子供が帰った後も遅くまで学級事務や教材研究に取り組んでいる。それでも終わらなければ、家に持ち帰ってまで仕事をしているのが現状である。

 人の育成は国家百年の計といわれる。それだからこそ、子供の成長にとっての基盤は、親が親としての役割を果たすことにあることを社会的にもっと取り上げるとともに、日々地道に教育活動に取り組む先生が数多くいることをもっと評価すべきであり、この点に目を向けていくことが大事である。親が自信と誇りを持って子供の成長に、また、先生方が伸び伸びと仕事に取り組めるよう、社会全体がバックアップしていくことこそ、教育の効果を高めていく上で最も求められていることである。






(上毛新聞 2006年7月11日掲載)