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司法書士 樋口 正洋さん(太田市浜町)

【略歴】明治大卒。司法書士。群馬司法書士会理事。東上州三十三観音霊場会会長。太田中央ライオンズクラブ元幹事。群馬法律学校元講師。東京地方検察庁元事務官。


相続の登記

◎早めに名義変更したい

 「先代の名義のままになっている土地を、息子の名義に変更するにはどうしたらいいか」

 「夫が亡くなったので、今住んでいる建物を私の名義にしたい」

 土地や建物の名義を変更したいという相談は、たくさんある。そのほとんどが相続による名義変更である。

 相続が発生すると、従来、亡くなった人の所有であった不動産を相続人の名義にする手続きが必要になる。

 それには、まず誰が相続人であるかを確定しなければならない。夫が亡くなれば、普通、妻と子供が相続人である。次に、誰がその不動産を取得するのかを決める必要がある。相続人全員が何分のいくつかの法定相続分を有しているのであり、それを話し合いによって一人の相続人に決めるのである。

 この話し合いはスムーズに進める必要がある。全員が納得して結論を出すのである。誰が不動産を取得するか決まったら、遺産分割の協議書に全員が署名し、実印を押すことになる。このとき世間では、はんこ代としていくらかを他の相続人に渡す習慣がある。その額は家庭によってさまざまである。

 もちろん、名義を変えるには、遺言があればそれに従えばよいし、法定相続分に従って共有名義にする方法もある。

 次に、戸籍謄本を準備しなければならない。亡くなった人の出生から死亡時までのものと、子供たち全員が結婚してから現在に至るまでのものが必要になる。不動産を取得する人の戸籍だけでは足らない。

 それに、住民票。これは不動産を取得する人の分だけでよい。それから、相続人全員の印鑑証明書である。これは遺産分割の協議書に押された印鑑が実印かどうか確認するために添付するのである。

 登記費用はいくらかかるのか。これも家庭によってさまざまである。登録免許税という税金がかかり、不動産の価格によって決まる。従って不動産の価格や筆数が多ければ、たくさんの費用がかかることになる。

 では、相続の登記は面倒だし、費用もかかることだから、ほっておいたらどうなるか。

 当面の間は何ら差し支えない。自分で使用している以上、特に問題は生じないし、固定資産税も現在、住んでいる人が納めればよいことになる。

 しかし、長年ほっておくと担保をつけることができなくなり、売却することもできなくなる。なぜなら、権利者が亡くなり二重に相続が発生するため、権利関係が複雑になるからである。遺産分割の協議書にも素直に署名押印することが少なくなる。

 このような事態を回避するためには、相続が発生したら早めに専門家に相談し、不動産の名義を変更することをお勧めする。






(上毛新聞 2006年7月17日掲載)