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さんすい森のリゾート社長 山田 直彦さん(みなかみ町湯原)

【略歴】法政大建築学科卒。東京でホテル経営のコンサルタント会社に6年間勤務後、帰郷してピザ専門店と和食の店を経営。湯原温泉街振興会副会長。


おもてなしの心

◎地域の魅力高める基礎

 私は、レストラン業という仕事柄、「どんなサービスをしたら喜ばれるだろう」と日々考え、頭を悩ませておりますが、やはり、その基礎になるのが「おもてなしの心」だと思います。

 そもそも「もてなす」は「持て成す」と書きますが、辞書によると「ごちそうする、歓待する」というような意味を持っています。例えば一流ホテルのレストランでサービスを提供することも「持て成す」ことであるし、自分の家で友人に料理を振る舞う―これもまた「持て成す」ことです。それぞれサービスのレベルに違いはありますが、どちらもお客さまをお迎えして、喜んでいただくという点では共通しています。要するに「おもてなし」とは相手(お客さま)に喜んでいただくことをする「行為」であるわけです。

 では、その「心」とは何でしょう。誰にでも経験はあると思いますが、相手に心を込めて「おもてなし」をして喜ばれたときは、本当にうれしくなるものです。何となく胸のあたりがジワーと熱くなるような感じで、とても幸せな気持ちになります。その気持ちこそが「おもてなしの心」なのではないでしょうか。喜ばれることに喜びを感じる心こそが「おもてなしの心」であると思います。

 ある学校の先生が「おもてなし」をテーマに授業を行ったそうです。その際、「おもてなし」の語源は「表裏なし=表裏のない気持ちでお客さまを迎える」とする説があると生徒たちに話されたそうです。なるほど、その通りだと思います。お金をもらっているからサービスをする。これではおもてなしにはならない。本当に喜んでもらいたいから、気持ちを込めておもてなしをするのです。心に裏があれば、それは真の「おもてなしの心」ではありません。

 あのディズニーランドでは「積極的にフレンドリー」という合言葉があるそうです。スタッフ全員が「語りかけ、歩み寄る」ように心掛けています。例えば、地図を見て迷っていると、どこからともなくスタッフの方が現れて、親切にアドバイスしてくれるし、カメラを持って構えていると「お撮りしましょうか?」と気軽に声をかけてくれます。ささいなことですが、お客さまはそういったサービスにディズニーの魔法をかけられてしまうのだと思います。確かに、お客さまから入場料をいただいています。しかし「おもてなしの心」がなければ、なかなかそこまでできないと思います。

 私は、いろいろとまちづくり事業に参加させていただいておりますが、やはり地域の魅力を高めていくためには、この「おもてなしの心」がベースになければならないと考えています。施設をつくったり、イベントを開催することより、まずその地域に「おもてなしの心」を根付かせることが大切です。「お客さま」のことを「客」と呼びつけているうちは、何をやっても無理であると思います。






(上毛新聞 2006年7月26日掲載)