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群馬大学教育学部助教授 西薗 大実さん(桐生市東)

【略歴】東京都出身。東京理科大大学院修了。薬学博士。専門は家政学と環境。現在は国や県が設置する環境関連の複数の審議会で委員を務める。


オゾン層の回復

◎一層のフロン対策を

 紫外線の強い季節だ。気温上昇や豪雨といった気候変動のニュースに隠れて、最近、オゾン層のことはあまり聞かれないが、日本の空は今、どうなっているだろうか。

 気象庁では、札幌、つくば、鹿児島、那覇の四地点でオゾン量を量っている。一九八〇年以降、オゾン層は徐々に減っており、今までに札幌では約7%、つくばでは約3%の減少が見られる。鹿児島、那覇はほとんど変化していない。

 これは、なぜだろうか? 南極のオゾン層破壊は、「オゾンホール」として有名である。南極では毎年十月に破壊のピークとなり、オゾンホールは最大になる。その後、十二月になるとオゾンホールはなくなったように見える。しかし、これはオゾン層が回復したのではなく、オゾンの薄くなった空気が広がって、周りの正常な大気と混ざって目立たなくなっただけである。そのため、南米チリの南極に近い地方などでは、オゾン層が少なくなって紫外線が強まり、住民は普段からサングラスをかけるなどの対策をしている。

 南極より小規模だが、北極でも同じようにオゾン層破壊が起こっている。北極では四月が破壊のピークで、その後五―六月には周りの大気と混ざって目立たなくなる。このため、日本では北極に近い北海道のオゾン層がもっとも減少率が大きく、南へ行くほど影響が少ないと考えられる。

 では、オゾン層はいずれ、なくなってしまうのだろうか。地球のオゾン層は、全部で約三十億トンと推定される。南極オゾンホールで破壊されるオゾンの量は毎年約一億トン。そうすると、世界のオゾン層はあと三十年でなくなってしまうことになる。

 しかし、それは免れそうである。オゾンは酸素から生成する。そして、オゾンが壊れることは酸素に戻ることである。この反応は、高度一万メートル以上の成層圏で、太陽の強いエネルギーにより起こる。自然界では、このオゾンの生成と分解は同時に起こっていて、生成の方が少しだけ多く起こるのである。地球で生命が誕生したのは約三十五億年前。その後、植物が酸素をつくり、約二十五億年前からオゾンができるようになった。こうして、オゾンがだんだんとたまっていき、今のオゾン層ができた。

 人間がつくったフロンは、オゾン分解を進めてしまう物質であるが、分解の方が生成を上回ってしまった。それでは、どうすればいいだろうか。使ったフロンは回収する。また、ノンフロン製品があれば、それに切り替える。このようにしていけば、やがてまた、生成が分解を上回るようになり、オゾン層は回復するだろう。その時期だが、専門家は最も早くても二〇五〇年と考えている。折しも、六月の国会ではフロン回収破壊法が改正された。今後も、一層のフロン対策を進めなくてはならない。






(上毛新聞 2006年7月31日掲載)