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県環境アドバイザー連絡協議会代表 鈴木 克彬さん(富士見村石井)

【略歴】成城大卒。元ナカヨエンジニアリング社長。県環境アドバイザー連絡協議会代表、ぐんま日独協会事務局長、前橋市フォークダンス協会副会長。


欧州のデポジット制度

◎生活の隅々にまで浸透

 ヨーロッパを旅して目に付くことは、デポジット(預かり金)制度が、一般国民の生活の隅々にまで浸透していることである。今回は、その制度について紹介したい。

 徹底して実行しているのは、飲料水用のペットボトル、缶、紙パックへの実施である。デパート、スーパー、街の売店等どこで購入しても、飲料水代以外にデポジット料金二十五―三十セント(四十円程度)を自動的に支払う必要がある。ただ、このデポジット金は、使用済みの空き瓶、缶、紙パックをスーパー等のお店に持参すると、払い戻してくれる。

 このシステムは、環境先進国といわれるドイツだけでなく、ヨーロッパ各国で実施され、同じ国内であればどこのお店でも返金してくれる。そして資源の再使用・再利用を図るとともにポイ捨て防止に大きく役立っている。実際に最近のヨーロッパ各国では、ペットボトルや缶等のポイ捨てごみは見当たらなくなった。

 そのほかのデポジット制としては、スーパーのカート(手押し車)がある。通常、カートは鎖につながれている。利用者は一ユーロ(約百五十円)硬貨を入れ、鎖を外して使用する。そして使用後はカートを戻し、鎖をつなぐと、使用前に入れた硬貨が返る仕組みである。実態として、消費者がカート整理を行っていた。

 日本のJRにあたるドイツのDB(ドイツバーン)等、各国の鉄道の主要駅には、旅行者用の荷物を運ぶための運搬用カートが玄関やプラットホームに多数置いてある。これも鎖が付いており、硬貨を入れて使用する。もちろん、使用後は一番近い指定の場所に戻し、鎖をつなげば硬貨は戻ってくる。旅行者にとっては大変便利なシステムである。

 デンマークのコペンハーゲンでは、レンタル自転車がこの仕組みであった。市内の百二十五カ所に駐輪場があり、自転車が置いてある。つながれている鎖部に二十クローネ(約三百円)硬貨を入れて自由に使用することができる。使用後は移動先の指定場所に自転車を戻し、鎖をつなげば二十クローネは返金される。要は、運用管理まで考えたシステムである。

 さらに、このデポジット制は、ビアガーデンのビールのジョッキでも行われている。ビール二ユーロ、ジョッキ二ユーロ、計四ユーロを初めに払うのが一般的で、飲み終わった後、ジョッキを戻せば二ユーロが返金される。もちろん、お代わりはジョッキさえ持っていけば、ビール代だけの二ユーロで済む。お客がこのデポジット制を知らず、「そのまま帰ってしまったら」との質問に「それは清掃費代として売店がいただく」とのことだった。

 ここまで書くと、読者の中には、日本だって昔はビール瓶、一升瓶、ラムネ瓶もデポジット制だった、と言われる方も多いと思う。また、ポイ捨て防止、資源の有効活用等に役立つなら、「日本でもデポジット制度を導入したら」とのご意見もあると思う。

 しかし、日本では、数多くの消費者団体、NPO、地方自治体等の要望にもかかわらず、業界団体の経済的理由(経費・採算面)、衛生上の問題、代金先払いに対する一般国民の抵抗感等の理由で実現性は薄いのが現状である。






(上毛新聞 2006年8月1日掲載)