視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
弁理士・羽鳥国際特許商標事務所長 羽鳥 亘さん(前橋市北代田町)

【略歴】成蹊大法卒。旧東京三洋電機特許部を経て87年独立。県知的財産戦略会議委員、日本弁理士会小中高支援チームリーダー、県高等学校PTA連合会顧問も務める。

中小企業支援制度

◎特許権の取得に有効

 特許権を取得するには、特許庁に特許出願を行った後、出願日から三年以内に所定の特許印紙を付して審査請求と呼ばれる手続きを行う必要があります。

 この審査請求により特許庁において、特許として認められるための要件を具備するか否かの審査が開始され、審査請求を行わない出願は取り下げたものと見なされます。

 日本では年間に約三十七万件の特許出願が行われていますが、このうち約二十万件(約55%)の出願に対して、審査請求が行われ、さらに審査請求が行われた出願のうち、約半分が特許権として成立しています。従って計算上、最終的に特許権として成立する確率は、出願全体の約25%となっています。

 ちなみに、本社所在地が県内となっている企業からは、年間約二千五百件前後の特許出願が行われています。

 現状を見ると、審査請求後、特許庁で審査に要する時間は平均で二年二カ月ほどかかっており、「特許登録まで時間がかかりすぎる」との批判が多く出されています。

 この長い審査順番待ち期間を短くする秘策として、出願人が中小企業または個人の場合には、「早期審査請求制度」があります。この適用を受けると、審査請求後約三―六カ月程度で審査結果が出されるため、出願日から一年以内で特許登録になることも可能となります。

 早期審査請求の手続きとしては、先行技術を開示し、自己の発明と先行技術との比較を行い、自己の発明が特許性を有する旨の主張をする必要があります。なお、特許印紙は不要です。

 また、中小企業を対象にした制度として「中小企業等特許先行技術調査支援事業」があります。これは平成十六年四月一日以降の、まだ審査請求されていない出願につき、特許庁から委託を受けた民間調査事業者が中小企業等の出願人の依頼に応じて無料で先行技術調査を行い、調査の結果を報告してくれる制度で、一社につき年間二十件まで依頼が可能となっています。

 前記二つの制度は中小企業による特許権取得に有効に働く制度ですが、残念ながら、その制度の存在があまり知られておらず、有効に活用されていないのが現状です。

 先日、地域に密着した形での知的財産普及に協力することを目的に日本弁理士会関東支部が設立され、県内在住のすべての弁理士もこの関東支部に所属することになりました。

 県内弁理士全体としても前記制度のPR等を含めた中小企業支援を、従前にも増して続けていきたいと考えております。県内中小企業を知的財産権の専門家である弁理士が応援し、特許権を武器にした大企業への戦いを優位に進めることにより「ものづくり立県ぐんま」の底力を他県に示したいものです。






(上毛新聞 2006年8月17日掲載)